鹿児島県・屋久島でつくられている「屋久島の黒豚味噌」は、屋久島で育てられた黒豚と、自分たちで仕込んだ麦味噌を合わせたご飯のおともです。手がけるのは、障がいのある方の就労支援や生活介護を行いながら、島の素材を生かしたものづくりに取り組むNPO法人「じゃがいものおうち」。今回は傘木風子さんに、黒豚味噌の誕生や手づくりする麦味噌についてお話を伺いました。
鹿児島で親しまれる麦味噌と屋久島産の黒豚

「じゃがいものおうち」では麦味噌を手づくりし、それを使った「屋久島の黒豚味噌」を2014年から製造・販売しています。きっかけは、屋久島の素材を生かした商品づくり。島内の農家に相談し、料理家の協力を得ながら、屋久島産の黒豚と自家製麦味噌を使ったレシピが生まれました。
黒豚はバラ肉ともも肉の2種類を使用し、肉の食感を楽しめるように、あえて大きめにカットしています。砂糖は種子島産のものを使うなど、できるだけ地元に近い食材を選び、添加物を使わずにつくっています。麦味噌の甘みに黒豚のうまみが重なり、ゴロゴロとした肉の存在感もしっかり。まずは炊きたてのご飯と一緒に味わいたくなる一品です。
麦麹から手づくりしている麦味噌

黒豚味噌の味の土台となる麦味噌も「じゃがいものおうち」で仕込んでいます。材料は九州産の大豆、自家栽培の麦、赤穂の塩のほか、麦麹も自分たちでつくります。蒸した麦を冷まし、「河内源一郎商店」の種麹を混ぜて麹室へ。スタッフが温度や湿度を管理しながら麦麹を育てます。
一度の仕込みに使うのは、大豆約90kg、麦約90kg。出来上がる味噌はおよそ350kgです。年に多くて2回ほど仕込み、工房の冷暗所でおよそ半年熟成させます。
スタッフと利用者が一緒に麹と塩を混ぜる工程は楽しい作業でもありますが、手作業で均等に混ぜるのはなかなかの大仕事。以前、大豆をつぶす機械が途中で故障し、急きょ手回しで作業を続けたこともあったそうです。先に携わったスタッフたちが試行錯誤してきた製法を受け継ぎながら、毎年の味噌を仕込んでいます。
「じゃがいものおうち」のものづくり

「じゃがいものおうち」は、障がいのある人もない人も共に暮らせる地域を目指して活動しています。その始まりには、障がいのある人が島で働いたり、日中を過ごしたりする場所の選択肢が少ないという現状がありました。
現在は約30人が通所し、年齢も20代から80代までさまざま。体力のある人、細かな作業が得意な人など、一人ひとりに合った仕事を分担しています。味噌づくりも、さまざまな工程をみんなで担える仕事のひとつです。
加工品づくりの始まりは、屋久島特産のタンカンを使ったジュースでした。旬のあるタンカンを瓶詰めにすることで、一年を通して販売できる屋久島の商品へ。その後、黒豚味噌や豆腐などへとものづくりが広がり、現在では屋久島の海水を使った塩もつくっています。
“つくること”と“暮らすこと”をつなぐ

今回お話を伺った傘木風子さんは横浜市出身。一般企業に勤めたのち、持続可能な循環型の暮らし“パーマカルチャー”に興味を持ち、日本各地を旅する中で屋久島へ移住しました。縁あって「じゃがいものおうち」に関わり、最初に携わったのは豆腐づくり。現在は「サロン湯の峯」で、豆乳ソフトクリームやパフェなど、カフェの仕事を担当しています。
屋久島で人と一緒にものをつくる中で、傘木さん自身も、自給自足とは一人ですべてをまかなうことではなく、地域の人や素材、仕事がつながり、暮らしが循環していくことなのだと考えるようになったそうです。
「できる限り栽培から製造まで自分たちで手づくりし、一人ひとりの障がい特性に合わせた作業を見つけながら、就労支援として屋久島ならではのおいしいものをつくり、販売しています。ぜひ食卓でも、まずは炊き立てのご飯と一緒にお楽しみください」と傘木さん。島の素材を生かし、みんなの手でつくられる麦味噌の甘みと、ゴロゴロとした黒豚の食感を味わってみてはいかがでしょうか。
「屋久島の黒豚味噌」は、屋久島島内では関連施設の「サロン湯の峯」、お土産物産の「ぷかり堂」「屋久島武田館」「ぽんたん館」「シェリーココ」「屋久島ふるさと市場・島の恵み館」「わいわいらんど屋久島」などで購入できます。横浜では、傘木さんの実母と妹が営むギャラリー兼雑貨店「switch box あけ/たて」でも、黒豚味噌やタンカンジュース、タンカン塩などを取り扱っています。
文/秋山昭代
