「第5回料理レシピ本大賞 in Japan 2018【料理部門】」大賞を受賞した『みそ汁はおかずです』の著者、瀬尾幸子さん。「具だくさんみそ汁」のヒットの火付け役となり、発行部数は20万部を超える大ヒット。みそをこよなく愛す瀬尾さん流の、みその楽しみ方、調理のコツなどを伺った。
(聞き手/藤本智子)
普段のお仕事について教えてください。
料理研究家としてレシピを考案し、テレビや雑誌、書籍などで紹介するのが主な仕事です。誰でも手軽においしくできて、毎日食べ続けられるシンプルな料理を心がけています。たとえば、ビーフシチューなどは、おいしいけれど、つくるのにも、食べるのにも体力がいる。そして、毎日は食べられない。家では、「昨日何食べたっけ?」と思えるくらいのものがちょうどいいと考えます。家は体を休める場所だから、ごはんも体がほっとするような、休まるものがいいですね。
料理研究家を志したきっかけは?
幼い頃から料理が好きで、「この道しかない」と、大学を卒業後、この世界に飛び込みました。当時、フードコーディネーターという仕事が一般的ではなかった時代でしたが、さまざまな撮影現場でアシスタント経験を積み、料理研究家として独立。仕事をこなす中で、年齢を重ねるごとに、料理へ求めるものや感じることが変わってきました。昔は、きれいで写真映えするような華やかなレシピを得意としていましたが、「きれいに見せる」と「おいしい」は違うので、今はとにかく「自然体」にとことんこだわっています。
瀬尾さんにとって、みその魅力とは?
一言でたとえるなら、みそって「イイやつ」。包容力があるから、どんな食材とも相性がよく、味をうまくまとめてくれます。主役にも脇役にもなれるみそは、万能です。みそ汁の具材は、本当になんでもいいのです。冷蔵庫にある野菜、豆腐、肉、魚など、具だくさんにすれば立派なおかずになります。食事づくりは毎日のことですから、がんばりすぎては続きません。その点、みそ汁ならワザもコツも不要、料理が苦手な人でも失敗がありません。こんなに手軽で万能なみそ汁をつくらない人が多いなんて、本当にモッタイナイと思います。地味でも、毎日おいしく食べ続けられるもの、その代表選手が「みそ汁」です。
調理のコツを教えてください。
料理はちょっとしたコツやひと手間でおいしくなりますが、その意味を理解することが大切。たとえば、本来、調味料はおいしくするために入れるのに、調味料を入れて失敗してしまう人が多いです。少なすぎたり多すぎたり、タイミングが早かったり遅かったり、何かがおかしいのです。みそ汁をつくる際は、みそを溶き入れる前に、味見をしてください。だしの風味が素材に入っているか、具材からどれだけ味が出ているのかなどを確認することで、おのずとみそを入れる量が感覚としてわかるようになります。みそ汁に限らずですが、やはりつくりたてが一番です。料理が苦手な人は、まず、得意料理を5つ覚えましょう!それから少しずつ増やしてみるといいですよ。食事を自分でつくれるようになれば、一生困りません。
夢を聞かせてください。
約30年料理の世界で仕事をしてきましたが、これからどう楽しもうか、妄想を膨らませています。普段の何気ない生活の中にも、暮らしを豊かにするヒントがたくさんあります。考え方次第で、楽しみ方は無限に広がりますが、その一例が料理。『みそ汁はおかずです』には、みそ汁を楽しむコツを随所に盛り込んでいます。料理を楽しむ第一歩になってくれればうれしいです。近い将来、人々の暮らしがITでどんどん変わると思います。便利になるのはいいことですが、「人とのつながり」「食」など、基本的な部分は、あえて「変わらない選択」をしたいと思います。私は、デジタルの文字よりも、手書きが好き。デパートにある豪華なお惣菜よりも、自分でつくるシンプルなお惣菜が好き。幼い頃、お母さんやおばあちゃんがつくってくれた、みそ汁やみそおにぎりが大好きでしたが、そんな、心がほっこりするような食を、これからも伝えていきたいです。