山口県の実家の倉庫に、大きな甕がある。中に真っ黒い味噌が入っていた。母も知らなかったものである。十年か二十年経っているようだ。年月とともにエネルギーを抱き込んだ貴重な味噌であった。上京してからは、年に一度、帰省した時に、少しずつ持って帰って、大切に食べたのを覚えている。
二年、三年と長い間、じっくりと熟成された味噌は、台地のパワーが移るのか、驚くほどパワーが宿り、病気の人もすっかり元気になってしまうのだ。
昔、小学生の頃、近所にスーパーマンのような後輩がいた。毎日、何を食べているのか聞いたことがある。「味噌(味噌汁)とこうこう(たくあん)だ」と言ったのを覚えている。
なんでこんな栄養のないもので元気なのかと思った。味噌とたくあんの発酵食品で、腸内を善玉菌の巣にした結果だと思われる。
私の食養の先生である細野雅裕氏は、「味噌、醤油は、四季の移り変わりとともに生産される野菜の味を引き出し、海の幸である魚介類の味を堪能させてくれる、最高の調味料であり、しかも栄養食品であります」と言い、著書『便秘・貧血は恐ろしい』(新国民社)の中で、味噌の効用、味噌を用いた食薬のつくり方を紹介している。
また細野氏は、「鉄火味噌」は、梅醤番茶、ゴマ塩と並ぶ三種の神器で、その薬効は、薬などの遠く及ばないものであり、安心して常用できる食薬の王様だと言っている。
国立がんセンター研究所で疫学部長をしていた故平山雄博士は、日本癌学会で「味噌が胃がんの発生リスクを下げる」と発表した。
ヘルツの会 代表 山本正