日本女性を一言でいうと、強くてやさしい「やまとなでしこ」。食材の味を引き立て、周囲を調和させる。それでいてキラリと光る存在。和食の基本「だし」にも通じる、「古きよき日本女性らしさ」を取り戻すこと。それが、日本の未来を明るくする「おだしプロジェクト」です。土岐山さんの伝えたい思いに迫ります。(聞き手/ ミソガール・藤本智子)
「おだしプロジェクト」を立ち上げたのはなぜですか。
高校教師時代に、母親の役割の大切さを実感し、日本の 国力を上げ、幸せな国をつくるには、女性が愛情に溢れ、賢く美しくあるべきという考えに至りました。そのために は、根本の教育を変えなければいけない。日本をよく知るには永田町だ!と向かった議員会館で門前払いを受けた 私。飛び乗ったタクシー運転手さんの教えで、今度は銀座へ。35 歳の時に皿洗いからホステスデビュー。そこから3 年間、夜の世界で孤軍奮闘。そして「健全な心」を育て るのは「食」。まずは和食の基本である「だしを引く生活」を伝えることで、女性たちの意識を変えるきっかけになれ ばと、昨年「おだしプロジェクト」の活動を始めました。
どのような活動をしているのですか。
鰹節削り体験のイベントや、食に関する講演会。だしと関わりの深い「みそ汁」もテーマの一つ。みそ汁づくりやみそまる(手づくりの即席みそ汁)体験会なども行っています。今は子どもはもちろん、鰹節を削ったことのないお母さんも多く、皆さん、味の違いに驚かれます。また年に数回ですが、昆布漁や鰹節づくりの手伝いをしています。昆布は利尻島、鰹節は枕崎や焼津、土佐清水、椎茸は北海道遠軽町に行き、実際にやってみて、ものづくりには相当な労力がいることを身をもって実感しています。
「だし」の魅力って、どんなところですか。
削りたての鰹節のおいしさは格別です。美しい黄金色のスープが食材の旨味を引き出します。だしは、どんな味も邪魔しない。自分は目立たないところにいて、素材の味を引き立てて、それでいて存在感がある。私はおだしの特性が日本人そのもの、もっというと、お母さんそのものだと思います。一番大切なのは「心」。お母さんが愛情をかけ、丁寧に子どもの料理をつくることだと思います。
活動を通して、一番伝えたいことは何ですか。
食べ物が自分の口に入るまで、たくさんの人々の苦労や努力があることを忘れてはならないと思います。人は決して一人では生きていけない。生産者や食事をつくってくれた人に感謝する気持ちを持つことが、「謙虚な心」につながります。まずは、母親となる女性からそのことを意識して取り組む必要があると思います。「感謝」と「謙虚さ」を持つ女性が増えれば増えるほど、日本の国力は上がると考えています。
これからのことについて教えてください。
「おだしプロジェクト」とは、日本の女性たちを応援するプロジェクトです。基本は、お会いした人に鰹節削り器を見せて、削ってもらって、聞かれたことに答えること。やはり実際に会って、目を見て話さないと、人には伝わりません。そしてもう一つ伝えたいのは、日本人としての「誇り」でしょうか。その意味で、日本人の魂の食ともいえる「ごはんとみそ汁」を伝える活動も、地道に続けていきたいと思っています。