広島ならではの「かきだし入りみそ」「白みそ」ほか無添加の生みそなど、幅広い商品ラインナップを誇り全国区で展開する「新庄みそ」。昨年、先代の山本弘樹さん(現会長)から引き継ぎ四代目社長に就任した山本美香さん。女性ならではのきめ細かさとアイデアで会社を切り盛りし自ら食育活動を行うなど広報マンとしても活躍。新体制から1年が経過した「今」を聞いた。
(聞き手/藤本智子)
「新庄みそ」について教えてください。
1923年(大正12年)に祖父、山本芳人が「新庄みそ」として、みそ製造をスタート、まもなく100周年を迎えます。安芸高田市にある吉田工場は、日本海へ注ぐ江の川のたもとにあり、澄んだ空気と美しい水がみその発酵に最適の場所です。最先端の機械を導入、徹底した管理のもと大量に安定的に商品を製造するシステムを採用し、全国への流通も可能となっています。が、基本は昔と変わらず、伝統的な手づくりに近い味を大切にしています。また塩麴や甘酒、調理みそなどの加工品も多く製造しています。
入社の経緯を教えてください。
幼い頃からみそに親しんできましたが、入社するつもりは全くありませんでした。子育てもひと段落した頃、ちょうど経理の方が定年退職になり人手を探していたため、パートとして仕事を始めることに。数年後、営業部へ配属、その後、開発部、総務部とさまざまな部署を経験し、徐々に責任ある仕事を任されるようになりました。その都度、はじめてのことばかりで困惑しつつも、社内外の方にアドバイスをもらったり、勉強会に行ったりと、体当たりでチャレンジ。父・山本弘樹の元で仕事をしていくうち、気づいたら経営視点で会社を見るようになっていました。
新体制になりどんな変化がありましたか?
これまで父が率先して現場で仕切っていたので、当初は社員の中に戸惑いがあったと思います。時代は刻々と変化し、いくらおいしいみそをつくっても、パッケージや打ち出し方を間違えれば、消費者に受け入れてもらえません。だからこそ、つくる人、売る人、伝える人…、さまざまな部署の連携プレーが、これまで以上に大切だと痛感。私も工場と本社を行き来し、社内にさまざまな委員会を設けるなど、新体制を整えるのに少し時間を使いました。まだまだ課題はありますが、1年が経過し、少しずつ社員に変化が表れてきました。リーダーだけでなく、社員一人ひとりが進んで課題や問題点を見つけるようになったのです。うれしかったのは、社内報「おきゃサポ通信」の誕生です。会社全体で、日々どのような動きがあり、仲間がどんな思いでいるのかなどを共有できる最高のツールだと感じています。
普段はどんな「味噌活」をしていますか?
専業主婦だったときのように、丁寧にだしを引いて…とはいきませんが、毎日欠かさずみそ汁を飲んでいます。時間が許せば、昼休みも自宅に戻り、みそ汁をつくります。広島では「麹歩合」の高い甘口のみそが人気で、香ばしいいりこだしとの相性は抜群です。すっきりとした甘みは、疲れた体をも癒してくれます。時間がないときは、お湯に溶かすだけの「みそ湯」でも十分においしいですよ。
※「麹歩合」とは、大豆原料に対する麹原料の割合。
夢を聞かせてください。
社員全員が幸せになり、仕事にやりがいを持って働けること。強いマンパワーがあってこそ、安全でおいしいみそを、消費者の皆様にお届けできると考えています。今後も伝統を守りつつ、現代のニーズにマッチしたよりよい商品づくりを心がけていきます。夢は、地元の関連企業と連携し「発酵食品」のテーマパーク「みそランド」をつくることです。
【新庄みそ】
広島県広島市西区三篠町3-12-23