2025年2月17日、中部国際空港セントレアの第1ターミナル2階国際線到着ロビーに、直径約2m、高さ1.5mの巨大な味噌桶が設置されました。この取り組みは、中部地域の魅力を訪日外国人に広く伝えることを目的としています。

今回の味噌桶の設置には、愛知県豊田市に本社を置く「桝塚味噌(のだみそ株式会社)」の協力がありました。同社は1928年創業の老舗味噌メーカーで、日本最大規模の木桶数を誇る天然醸造蔵を有し、3度の日本一にも輝く実績を持っています。伝統的な製法を守り続け、100年以上にわたり木桶を使用して味噌を製造しています。
「今回、空港内に伝統的な味噌桶を展示して、多くの方に見ていただけるようになり大変うれしく思います。愛知県の発酵食文化、醸造文化だけでなく、日本の食文化に興味を持つ外国人旅行者が増えることを期待しています」と、桝塚味噌4代目の野田好成さん。

設置された味噌桶は、桝塚味噌が約90年前から実際に使用していたもので、今回の展示のために同社から貸与されたもの。木桶が大きく、ターミナル内にそのまま搬入することができなかったため、木桶を一度解体し、空港内で再度組み立てて搬入されました。
「木桶を解体し、再度組み立てるというのは初めての試みでした。約100年しっかりと円を保っていたものを解体して、組み立て直すということはとても難しいことでした」と語るのは、大進建設株式会社の谷澤一允社長。
木組みは1ミリでもずれていくと最終的には何センチも大きなずれが出てしまうそうで、円を再現することが難しかったそうです。外観を損なわないよう内側を一部再加工し、組み直しやすいように工夫されたとか。

木桶の作り手が減少していて、実際に使用されている木桶を見られる場所は限られてきている現状。その木桶を「中部地域の空の玄関口」である中部国際空港セントレアに設置することで、外国人旅行客に日本の伝統に触れてもらい、より多くの方が中部地域に訪問してもらえるように情報発信をしていくそうです。
木桶の味噌桶は、ただの展示物としてだけではなく、地域と世界、人と人をつなぐ“文化のかけ橋”です。中部国際空港セントレアを訪れた際には、ぜひこの味噌桶の前で立ち止まり、日本の伝統と未来のつながりを感じてみてください。
文/秋山昭代