麹屋もとみや・本宮啓さん「この地でしかつくれない味わいにこだわりたい」

岩手県八幡平市にある「麹屋もとみや」は、味噌をはじめ、味噌や麹を使ったさまざまな加工品を製造・販売している老舗の麹屋です。今年8月に直売店をリニューアルし、地元企業・店舗との連携を深めた取り組みなども積極的に行っています。代表取締役社長の本宮啓さんにお話を伺いました。

聞き手/秋山昭代

【本宮啓さんプロフィール】
1982年生まれ、岩手県出身。東京の大学卒業後、地元の銀行に就職。2019年に麹屋もとみやに入社し、2022年5月に4代目に就任。

麹屋もとみやについて教えてください。

1930年に曾祖父が麹屋を立ち上げたのが当店の始まりです。その後、2代目である祖父の代から味噌づくりも始めました。以来、約90年にわたり伝統を受け継ぎつつ、時代のニーズに合わせさまざまな商品を開発してきました。

また、隣接する味噌工房「惇(じゅん)」では、繁忙期以外、毎月「手前味噌づくり教室」を開催しています。飽食の時代になり、食に対する意識が希薄になっていると感じています。日本食の中心にある味噌の原材料や製造過程を知っていただくことで、食への意識が高まるきっかけなってくれたら嬉しいです。

入社経緯、普段のお仕事について教えてください。

若い頃から製造や配達などの手伝いはしていましたが、もともと家業を継ぐつもりはなく、大学卒業後は地元の銀行に就職しました。そんななか、銀行員という職業柄地域の方々と接する機会が多く、実家の商売が地域の方々に愛され、支えられていることを次第に実感するようになりました。

就職してから10年くらい経った頃から気持ちに変化が表れ、自分の代で無くしてよいものか考えるようになり、5年間ほど悩んだ末、37歳の時に入社を決意しました。あとは、手前味噌ですが、改めてよい商品をつくっているのだと実感したことも大きかったです。

現在は、製造に入ることもありますが、基本的にはベテランの職人に任せて、店舗などの現場にいることが多いです。また、商談や取材対応等も担当しており、仕事は多岐にわたります。社運をかけて臨んだ今年8月の直売店のリニューアルは、プロジェクトチームを立ち上げ、およそ1年がかりで完成させました。

味噌づくりのこだわりを教えてください。

看板味噌「生きているこうじみそ」は、甘口(一升四合入れ)、中辛(一升入れ)、辛口(六合入れ)の3種類。大豆は岩手県産の「ゆきほまれ」「ミヤギシロメ」等の大粒白目大豆、米は岩手県産の「ひとめぼれ」を使用するなど、地産地消にこだわっています。

八幡平市は、冬は雪深く、夏でも冷涼な気候。伝統的な醸造方法で味噌を仕込み、およそ2年かけて発酵・熟成させることで、温暖な地方の味噌とはまた違う、この土地ならではの味わいに仕上がります。発酵に時間をかけることで、香り高く、まろやかで上品な味わいが醸し出されます。豚汁やきゅうりに味噌をつけるシンプルな食べ方がおすすめです。

読者に一言お願いします。

直売店のリニューアルに合わせ、30代の働く女性をターゲットにした新しいブランド「kiik」を立ち上げました。食事にこだわりたいけど時間がない方や、子育て中の主婦の方が、手軽に普段の食事に取り入れてもらえるような商品を取り揃えています。味噌の国内消費量は減っていますが、次世代に味噌の文化を継承するきっかけになってくれたらと考えています。

また、人とのつながりを大切にし、地域を盛り上げたいという思いから、積極的に地元の食材を活用したり、地元企業・店舗と連携した商品を開発したりしています。2022年8月、イギリスの名門校ハロウスクールの全寮制のインターナショナルスクールが開校されたこともあり、八幡平市が注目される機会が増えそうで期待しています。

リニューアルした店舗「SHIMONO528」は、私たちのこだわりの味噌をはじめ、味噌や麹を使用した加工品、厳選した地元の銘品を多数取り揃えていますので、ぜひお越しください。

関連記事

  1. 【告知】11/5(土)・6(日)「ふくしま浜通り観光交流フェスティバル 浜フェス2022 来て、見て、食べて、浜通り」開催

  2. 矢ノ目糀屋・川端徹さん&川端由美さん「蔵に新たな息吹を

  3. 山二醤油醸造・新関さとみさん「日本の食文化を伝えていく喜び」

  4. 糀和田屋 外観

    糀和田屋・三瓶正人さん「代々受け継ぐ手づくり糀が、おいしさを引き出す秘訣」

  5. 【ご当地味噌グルメ】甘じょっぱさがクセになる!福島「みそかんぷら」

  6. 【味噌の店】三陸の海鮮と仙台味噌料理を楽しむ「新古々がみそ 仙台駅前」