東京の深川永代橋の側にある「ちくま味噌」は、創業300 年以上も歴史のある味噌蔵だ。「忠臣蔵」に登場する「赤穂浪士」も休憩に立ち寄ったとして石碑が残されている。また、歌舞伎の「四千両小判梅葉」の中にも、「道理で味がいい味噌はちくまにかぎるのう」という台詞が登場するほど、人々の生活になじんでいたとされる。
すでに100 万人都市だった当時の江戸では「手前味噌」が追いつかず、日本中から大量の味噌が運ばれるようになり、それが味噌業の発展へとつながった。
中でも、江戸庶民に好まれたのは、「江戸甘味噌」という光沢のある茶褐色の味噌。大豆の香味と麹の甘みが見事に調和した味噌で、田楽やどじょう汁、土手鍋などの江戸料理に巧みに使われた。
その後も、明治維新や関東大震災など歴史の波に揉まれながらも、順調に業績を上げていったちくま味噌。特に東京大空襲の際には、いち早く鉄筋製の工場を導入していたことから倒壊を免れ、食糧難に陥った市民に味噌を提供し、都市復興の原動力の一つとなった。
1977 年に入社し、製造業務からスタートした竹口さんだったが、驚いたのは、味噌職人の技の繊細さとするどい勘。長年の経験から、その日の麹や味噌の出来具合を直感で感じ、手入れを行う。数年間現場で修行した後、販売 や営業職を経て、販売業を主軸にした関連会社「ちくま食品」の社長に就任、現在に至る。
味噌汁の消費が大きく落ちている現状に、「味噌汁はもともと家庭のものであったが、いつからか、『料亭で出るような味噌汁こそ本物の味』という印象が根付き敷居が上がってしまったのは否めない。もっと自由に、各家庭の個性を楽しんでもらいたい」と話す。「味噌仕込み教室」ほか、地域の食育活動にも熱心に取り組んでいる。
また、海外での味噌の需要の高まりに着目。アメリカ、アジア、ヨーロッパへとさらなる事業拡大のため、海外へ出向くことも多いそう。ちくま味噌の商品は羽田空港でも販売中。外国人観光客のお土産としても人気だ。
【株式会社ちくま食品】
東京都江東区佐賀1-2-9 猪瀬ビル5 階
TEL/03-3641-5101
Chikuma Miso located near Eidai-bashi Bridge in Tokyo was established more than 300 years ago. It plans to expand its business abroad as miso has been gaining increased attention internationally. The company’s products are available at Haneda Airport, which are very popular among foreign travelers.