御膳味噌の伝統を受け継ぐ、志まや味噌・濱野正裕さん「量を追わず、質を追う」

徳島市にある「志まや味噌」は、明治32年に麹屋として創業し、その後、醤油と味噌の製造をスタート。120年以上の歴史をもつ、老舗の味噌メーカーです。南国阿波の温暖な風土と豊かな自然、匠の技が生み出す「御膳味噌」の伝統を受け継いでいます。代表取締役の濱野正裕さんに、お話を伺いました。

聞き手/藤本智子

御膳味噌について教えてください。

阿波の名産品である「御膳味噌」は、江戸時代からの伝統を受け継ぐ格式高い味噌です。大豆よりも麹の割合が多いためやや甘口となりますが、しっかりと熟成させているため、豊かな味わいと香りの良さが特徴です。御膳味噌は、辛口味噌と甘口味噌の両方の特徴を併せ持つ、全国的にも珍しい味わいの味噌です。

味噌づくりで、大切にしていることは?

「とにかく質のよいものをつくる」という思いを代々受け継いでいます。28歳の時、当時社長であった父が体調を崩したため、急遽、家業を継ぐことに。職人気質で口数の少ない父からは、とにかく真剣につくる姿勢を学びました。現在でも、味噌の仕込みの際には、率先して作業を行っています。

味噌仕込みの要となる麹づくりは、現在も手作業にこだわり続けています。御膳味噌は「甘味」も大事にしているからこそ、甘みを引き出す「麹の酵素」の働きをコントロールすることがとても重要です。

以前、工場を新築した際、作業性も考慮し、麹づくりの機械化も検討したものの、納得のいく麹をつくるため、あえて経験を活かせる手作業を残しました。

志まやの御膳味噌について教えてください。

一般的な御膳味噌の「麹歩合(大豆に対する麹の割合)」は、11~13割が一般的ですが、志まやの御膳味噌は、さらに米麹を増やし15割前後と高めです。また、仕込みの時期にもよりますが、半年~1年程度じっくりと熟成させているため、塩かどが取れ、濃厚なコクと甘味を楽しめるのが特徴です。原料は、私自身が全国各地より厳選した国産のお米と大豆を使用しています。

人気のおかず味噌について教えてください。

地元では、味噌汁以外にもおかず味噌として食べる習慣が根強く残っています。ごはんや野菜と相性抜群で、ちょっとした贈り物にもおすすめです。

大手百貨店での勤務を経てUターンした娘の比加里が、現在、商品開発や店舗での接客を担当しています。昨年春には、前職での経験を活かし、おかず味噌のパッケージをリニューアルしました。

読者に一言お願いします。

御膳味噌は、深い旨味とコク、甘味を一度に味わえる味噌で、具材を選ばずさまざまな料理に使えます。今後も地元で愛されている味わいを受け継ぎ、さらに多くの方に召し上がっていただけるよう発信を続けてまいります。

最近では、味噌を使ったレシピが多く紹介されるようになりましたが、田楽味噌や酢味噌のように、手軽に気の利いた料理ができる商品を増やしていきたいです。

志まや味噌オンラインショップ

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