カネジュウ食品・稲森律子さん「駿河が誇る相白味噌を国内外へ伝えたい」

「禅」のブランドで知られるカネジュウ食品は、300年以上の伝統を受け継ぐ老舗の醸造メーカーです。看板商品である「相白味噌」とは、京都の白味噌と田舎味噌の特徴を併せ持つ静岡県のご当地味噌。同社は、全国で唯一の「相白味噌」製造メーカーでもあります。代表取締役社長・稲森律子さんに、お話を伺いました。

聞き手/秋山昭代

【稲森律子さんプロフィール】
1984年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、自動車のタイヤメーカーに就職。2014年カネジュウ食品に入社、2019年代表取締役社長に就任。現在、工場長も兼任。

カネジュウ食品について教えてください。

カネジュウ食品は、静岡県焼津市にある味噌・金山寺味噌・あま酒の製造販売をしている会社です。

江戸時代中期(1711年)、旧東海道筋(現在の静岡市)で、田尻屋利兵衛が味噌・醤油づくりを始めました。その後、明治40年に味噌の醸造所を増設し、大々的に製造を行うようになります。現在では、味噌や麹を使った加工品も多く販売しています。

どんなお仕事をされていますか?

工場長も兼任しているため工場での作業が一番多いですが、新商品の開発や広報活動等、仕事は多岐にわたります。

実は、以前は、自動車のタイヤメーカーで営業として働いていて、全く違う世界にいました。3姉妹の次女で、会社を継ぐつもりは全く無かったのですが、後継者候補がいないという事実を知り、一念発起し会社を継ぐことに。入社後は、ベテランの職人から製造を一から学び、3年後に工場長に就任しました。

製造現場は力仕事が多かったり、夜間も麹の手入れをしたりとハードな面も多いですが、質の高い商品をつくっている自信はありますので、やりがいを感じています。これからも麹が奏でるおいしい発酵食品を、駿河の地から、全国の皆様にお届けしたいと考えています。

相白味噌とは?

「相白味噌」は、駿河の国(現在の静岡県中部)を中心に食べられてきた、全国的にも珍しい味わいの味噌です。京都の白味噌のような見た目ですが、そこまでの甘さはなく、通常の味噌より少し甘い「甘口味噌」にカテゴライズされます。

静岡県の穏やかな風土の中で生まれた相白味噌は、塩辛さが控えめで、麹の香りと甘み、大豆の風味をしっかり感じられる味わいです。

相白味噌の始まりは、戦国時代にさかのぼります。今川義元を頼り京から移った公家たちが、駿河の地でも京風の白味噌がつくれないかと考え、さまざまな試行錯誤を重ね「相白味噌」の原型をつくり出したとされています。

後に、京都の白味噌と田舎味噌の特徴を併せ持つ(相伴う)ことから「相白味噌」と呼ばれ、人々に愛されてきました。

味噌づくりのこだわりを教えてください。

品質の要となる「麹」が、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが、とても大切だと考えています。

気温や湿度、米の水分など、条件は毎回違うため、最終的には職人の経験から適切な作業内容を判断します。麹室の中は、室温30~40℃、湿度100%。手で麹をかき混ぜるのは大変な作業ですが、丹精込めて手入れをしています。

使用する水は、南アルプスの伏流水・大井川の地下水を使用しており、この地でしかつくれない味の大事な要素となっています。

また、相白味噌の特徴である美しい白の色合いを出すため、大豆の皮を丁寧に除去しています。また、仕込みの温度が高すぎても低すぎても色が変わってしまうため、温度の管理は特に気を付けています。

今後の展開、伝えたいことは?

駿河が誇る「相白味噌」を、もっと多くの方に召し上がっていただきたく、引き続き、「静岡ブランド」として相白味噌や金山寺味噌を㏚するなど、広報活動に力を入れていきたいと思っています。

最近では、当社の金山寺味噌を使ったモスバーガーの地域・数量限定の商品「金山寺味噌マヨチキンバーガー」「モスライスバーガー金山寺味噌マヨチキン」が販売され、大好評だったとのこと。

マルシェなどのイベントでも、一般消費者の方に商品を手に取ってもらえることが増えました。今後も、手軽に味噌を食べてもらえるような新商品の開発や、海外への販路も広げていきたいです。

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