「骨粗鬆症」とは、骨の代謝バランスが崩れ、骨がスカスカになり、もろくなった状態のことです。高齢女性の発症リスクが高くなっており、50代では10人に1人、60代では5人に1人、70代では2人に1人がかかっていると報告されています。
骨折し寝たきりになってしまうと、健康年齢が著しく短かくなりますので、注意が必要です。骨粗鬆症を予防するには、日々の食生活が大切で、特に味噌汁は効果的と言えるでしょう。
骨粗鬆症の原因とは⁉
骨粗鬆症の原因としては、カルシウムやマグネシウムの不足や、カルシウムの吸収に必要なビタミンDなどがバランスよく摂れていないことが挙げられます。また、閉経後、骨の細胞を活発にする女性ホルモンである「エストロゲン」が減少するためだと考えられています。
そのほか運動不足や化学療法薬、過度のアルコール摂取、遺伝なども関係しているとされています。
骨粗鬆症予防のポイントは?
バランスのとれた食事を食べることはもちろんですが、食事にカルシウムとビタミンDを摂るように意識するとよいでしょう。日光浴をすることでも、体内にビタミンDが合成されます。
また、大豆に含まれるイソフラボンは、エストロゲンに似た働きをして減少を補うため、骨粗鬆症の予防・改善に効果があると考えられています。
そのほか、定期的な運動、過度のアルコール摂取を避ける、禁煙等はもちろんのこと、とにかく転ばないようにすることも大切です。
具だくさん味噌汁がミソ
味噌の主原料である大豆には、イソフラボンが含まれているほか、骨粗鬆症の予防に欠かせないカルシウムも含まれています。
さらに、味噌汁の場合は、出汁を引く煮干しや削り節ほか、具材に使用する豆腐やわかめ、緑黄色野菜にもカルシウムが含まれています。
味噌汁は、さまざまな具材を入れることができるので、飽きることなく毎日飲むことができる優れた食べ物です。
戦に参加していた侍の身体は、骨がとても重要であることは間違いありませんが、戦に耐えられるだけの骨を、米と味噌が支えていたのでしょう。
カルシウム源としての味噌汁
最近の日本人の食事パターンは、欧米化により肉の消費量が増え、豆や海藻、小魚の消費が減ってきており、伝統的なカルシウム源が食卓に上りにくくなったと言えるでしょう。
牛乳など乳製品によるカルシウム補給も考えるべきですが、それ以上に、日本型のバランスのよい食生活を見直す必要があると考えています。カルシウムを十分に摂ったところで、同時に脂質やコレステロールを摂りすぎて肥満や動脈硬化を起こしてしまっては、本末転倒です。
味噌汁は、カルシウム源としても、最高の食べ物なのです。味噌汁のある食事を定着させることで、骨粗鬆症だけでなく、生活習慣病を防ぐことにも繋がります。
研究から期待される骨粗鬆症の予防効果
河村孝雄さんは、マウスを使い、一日一杯の味噌成分を長期間摂取した時の効果について調べました。結果、味噌には、骨の細胞の改善効果があったことを報告しています。味噌に含まれるダイゼインとゲニステインが影響していると推測され、味噌抽出物に、破骨細胞の分化抑制作用を示したそうです。今後の研究に期待が高まります。
文/渡邊敦光
1940年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒。九州大学大学院博士課程理学研究科修了。理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、1996年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、2004年に退官後も名誉教授として研究を続行。
【参考】
河村孝雄 味噌の骨粗鬆に予防に関する研究 中央味噌研究報告 33 120-128(2012)