味噌はアンチエイジングにも役に立つ⁉

味噌は、古くから人々の食生活を支えてきたものですが、おいしくて健康的なだけでなく、アンチエイジングにも効果的な食品として注目されています。今回は、味噌とアンチエイジングの関係について紹介します。

メラノイジンとは?

味噌は、発酵・熟成の過程でだんだんと色が濃くなっていきますが、これは、アミノ酸と糖が反応することで起こる「メイラード反応」によるものです。

メイラード反応によって生成されるのが、「メラノイジン」という褐色の物質で、熟成期間が長い味噌ほど多く含まれています。このメラノイジンが、アンチエイジングに一役買うと期待されています。

また、最近の研究では、大豆タンパク質が分解してできるペプチドにも、抗酸化作用があることがわかっています。味噌中には、多種多様のペプチド類が含まれています。

強力な抗酸化作用

メラノイジンは、トコフェロール(ビタミンE)よりも抗酸化作用が強いとされています。大豆そのものにも抗酸化作用がありますが、味噌は大豆に比べ、はるかに高い抗酸化力があることが知られています。

下橋淳子さん方が、味噌の色調と抗酸化性との関係を調べたところ、明度の低い味噌ほど、抗酸化力が高かったそうです。また、大豆の配合割合が多いほど抗酸化力は強く、メラノイジンに係るアミノ酸の組成が関与していることも示唆されています。

当然ながら、強い抗酸化作用があるということは、アンチエイジングのみならず、がんや動脈硬化などを予防することにも繋がると言えるでしょう。

メラノイジンが腸内環境の改善にも一役⁉

メラノイジンが腸内善玉菌である乳酸菌の増殖を促進し、逆に悪玉菌の増殖を抑制することも明らかにされています。

五明紀春さんの研究によると、メラノイジンを加えたエサを与えたラットの実験では、通常のエサを与えたラットと比べて、腸内の乳酸菌が10倍も増えることが証明されました。

また、メラノイジンを食べることにより、エサが腸内にとどまる時間が短縮され、排便をスムーズに行うことで、毒素を排出する時間を短くすることができるというワケです。

味噌を毎日摂ることは、美容やアンチエイジングに不可欠なデトックス効果にも繋がると期待できます。

おいしく食べてアンチエイジング

このように、私たちは、メラノイジンの有益な生理機能を含む味噌汁から多くの恩恵を受けています。

また、メラノイジンは、味噌のコクやまろやかさにも影響し、味に深みを与えてくれるとも言われています。メラノイジンは、加熱しても効果が変わりませんので、お味噌汁はもちろん、煮込み料理などにもおすすめです。

私は、81歳になりましたが、大抵の方が驚かれます。肌のケアは髭剃りの後に化粧水をつけるくらいで、特別なことは行っていません。元気と若さの秘訣は、一日3回味噌汁を食べているからだと思っています。

文/渡邊敦光

1940年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒。九州大学大学院博士課程理学研究科修了。理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、1996年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、2004年に退官後も名誉教授として研究を続行。

【参考】
(1)江崎英男 味噌を科学する 生活の科学 32 1-9 2010
(2)三浦理代 メラノイジンの生理機能 醸協 37,253-256,2005
(3)五明紀春 糖尿病の改善やがん予防効果が期待される褐色色素 みそサイエンス最前線⑯ 1-16 2009
(4)山口直彦 味噌の抗酸化機能について 醸協  87 721-725. 19992
(5)下橋淳子、西山一郎 味噌の色調と抗酸化性との関係 日本食生活学会誌 19,247-250. 2008.
(6)友田宣考、中村夫、吉弘芳郎 メラノイジンの研究について 生産研究 7,37-41,
(7)渡邊敦光他 長崎医学 81, 249-3403, 2006
(8)Watanabe H et al Hypertension Res 29 731-738n 2006.
(9)Watanabe H et al Amer J Hypertent 31 41-47, 2018.
(10)Fujimoto N et al Food Clincal Toxicol 36, 699-703, 1998

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