宮崎県の青島は、一年中温暖で南国の情緒漂う場所。長友味噌醤油醸造元(カネナしょうゆ)は、この地で140年以上にわたり南九州の食文化である「甘口醤油」や「麦味噌」をつくり続けています。
職人たちの手によって丁寧につくられ、香味、風味、美味の三拍子揃った商品として、地元のみならず、海外でも非常に高い評価を得ているそうです。長友味噌醤油醸造元4代目・塩見陽子さんに、お話を伺いました。
聞き手/藤本智子
【塩見陽子さんプロフィール】
1966年生まれ、宮崎県出身。大学卒業後、スイスの金融関係の企業へ就職。退職後、長友味噌醤油醸造元4代目として会社を切り盛りする。
お仕事を始めた経緯は?
実は、もともと跡を継ぐ予定はなく、大学卒業後は、スイスの金融関係の企業へ就職し、そこで出会った夫と結婚しました。シンガポールに拠点を移し、充実した日々を送っていたのですが、15年ほど前、先代である父が倒れたことをきっかけに帰国することに。
シンガポールと青島を行き来する中で、日本固有の文化「味噌・醤油」の魅力に、改めて気付きました。夫からも、「100年以上も続いているなんて、スゴイこと。やってみたらどう?」と、背中を押してもらい、跡を継ぐことを決意しました。
お味噌の特徴について教えてください。
看板商品である「カネナ無添加大麦合せ味噌」は、一般的な九州麦味噌よりもさらに麹歩合を上げた18割以上。大豆に対する麹の割合を多くすることで、大麦と米に由来する自然な甘みを最大限に引き出しています。
原材料は100%九州産にこだわっていて、無添加で熱処理もしていない生味噌です。差し水には、ミネラル豊富な宮崎の水を使用しています。
また、じっくりと天然醸造で発酵・熟成させ、マイルドなテイストに仕上げているため、ドレッシングやおかず味噌などにもオススメです。麹の粒を残してある「粒タイプ」と、麹の粒をすりつぶしてある「すりタイプ」があります。
こだわりのポイントは?
原材料はもちろんのこと、水や空気、気候など、さまざまな条件が関係するため、どの商品も随所に人の手をかけ、丁寧につくることを心がけています。
代々受け継いでいる伝統製法や、蔵に棲みついている微生物の働きはもちろんのこと、温暖な青島の地だからこそ出せる味わいです。完成したばかりの味噌からは、ほのかにキャラメルのような芳香がしますが、それが、うまく発酵が進んだというサインです。
味噌は生き物ですので、その時々で多少の違いがありますが、それも魅力の一つと考えていただけたら嬉しいです。
夢を教えてください。
シンガポールや香港など海外の催事にも積極的に出店していますが、現地の方々から好評で、手応えを感じています。
また、海外のシェフは、味噌や麹の使い方の発想がとてもユニークです。まだまだ開発されていない味噌の使い方や楽しみ方がありそうだと、ワクワクしています。
伝統を受け継ぐことを大切にしながらも、これまでの海外経験も生かし、味噌や醤油の可能性を日々模索しています。海を越え、時代を越えて、青島の食文化を国内外に届けていきたいです。