発酵をもっと自由に、おいしく「発酵デパートメント」

東京・下北沢にある「発酵デパートメント」は、日本各地の発酵食品が集まる発酵専門店。併設されているレストラン「発酵とせいろ蒸し 七福菌」では、さまざまな地域のローカル発酵食を味わうこともできます。店内には個性豊かな味噌をはじめとした発酵調味料が並び、発酵好きはもちろん、海外からの来店客も多く訪れます。

発酵文化を未来へつなぐ場所として

発酵デパートメント誕生のきっかけは、2019年に開催された展覧会「Fermentation Tourism Nippon ~発酵から再発見する日本の旅~」でした。その時キュレーターを務めたのが、発酵デパートメントオーナー(運営:発酵デザインラボ)で発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。47都道府県を巡り、地域に根づく発酵文化や醸造の現場を取材した経験が、現在の店づくりにもつながっています。

2020年、下北沢BONUS TRACK内にオープンした発酵デパートメントのコンセプトは、「世界の発酵みんな集まれ!」。

「発酵は専門的な世界に捉えられることもありますが、気軽に楽しんでほしいです」と発酵デザインラボの広報兼マネージャーの小野民さん。

近年は海外からのお客様も増え、「KOJI」や「HAKKO」という言葉も世界に広がりつつあります。発酵デパートメントは、地域の発酵文化と世界をつなぐ場になっています。

“驚き”や“物語”を届ける発酵食品

店頭で扱う商品は、およそ500品目。その多くが、生産者との直接取引によるものです。商品選びで大切にしているのは、伝統製法であること、そして“驚き”や“面白さ”があること。

たくさんの商品の中でも、人気No.1は山梨にある五味醤油と群馬に店舗を構えるアウトドアショップPurveyorsと共同開発した「アウトドア納豆」。アウトドアでも手軽に納豆を楽しめるよう工夫された商品です。

また、山梨県の戸塚醸造店の定番商品である「心の酢」から派生した「にごり酢」は、発酵デパートメントのみで購入できるオリジナル商品。純米酢づくりで生まれる“澱(おり)”を活かし、旨味豊かに仕上げています。

「食材を無駄にしないという考え方も、昔から発酵文化の中にあるんです」と小野さん。

発酵食品には、現代の食の課題につながる知恵も息づいていました。

麦味噌や酢味噌も。味噌の世界をもっと自由に

発酵デパートメントでは、味噌だけでも十数種類を取り扱っています。小野さんがおすすめしてくれたのが、愛媛県宇和島の「いいみそ」。大豆ではなく“はだか麦”と塩だけでつくられているのが特徴で、やさしい甘みととろみのある食感がお気に入りだとか。

さらに、熊本県人吉市の老舗蔵・緑屋本店と共同開発したオリジナルの麦味噌も人気商品。麦麹の自然な甘みを活かし、麦味噌初心者でも親しみやすい味わいに仕上げています。

スタッフおすすめの食べ方は、「いいみそ」と「にごり酢」を合わせた酢味噌。甘みと旨味が重なり、野菜につけるだけでも奥深い味わいになるそうです。

また最近では、手前味噌づくりワークショップも開催。実際に仕込みを体験することで、発酵をより身近に感じてもらう取り組みにも力を入れています。

発酵をもっと日常の楽しみに

併設されたレストラン「発酵とせいろ蒸し 七福菌」の看板メニューは、「七つのめでたい菌を食べよう!」をテーマにした「発酵七福定食」。

麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌など、代表的な発酵菌をバランスよく取り入れ、“発酵多様性”を楽しめる献立になっています。現在は台湾の発酵文化をテーマにした定食を展開しており、せいろ蒸しと発酵調味料を組み合わせた、やさしい味わいが人気です。

「これからの季節におすすめなのは、三河みりんを絞った残りかすの“みりん粕”を利用したソフトクリーム。健康のためだけではなく、“おいしい”“好き”という感覚で、発酵を楽しんでほしいです」と小野さん。

味噌は、その土地の文化や暮らしを映す存在。発酵デパートメントは、そんな発酵文化の奥深さを、楽しく日常へ届けてくれる場所でした。

【発酵デパートメント】
東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内

文/秋山昭代

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