「味噌は料理の隠し味」そんな固定観念を、やさしく覆してくれる焼き菓子があります。石川県金沢市の菓子ブランド「まめや金澤萬久」が手がける「みそレーヌ」です。味噌をほんのり効かせるのではなく、あえて”味噌の個性を楽しむ”ことを目指したマドレーヌ。その開発の背景には、地域の発酵文化への敬意と、「全国の味噌でお菓子を作りたい」という夢がありました。
一本のぶどうの木から始まった「ぶどうの森」

「まめや金澤萬久」を展開するのは、石川県金沢市の株式会社ぶどうの森。1982年、一本のぶどうの木から始まったぶどう園「ぶどう園もと」をルーツとし、現在はレストランや洋菓子工房、結婚式場、蒸留所までを備えた”食と農のテーマパーク”へと成長しました。創業40周年を機に社名を「ぶどうの木」から「ぶどうの森」へ変更。「一本の木から、命がつながり巡る森へ」という思いが、その名前に込められています。
現在、約6,000坪のぶどう園では40品種以上のぶどうを栽培。一般的なぶどう園の品種数を大きく上回り、夏から秋にかけて次々と旬の品種が楽しめます。
広大なぶどう棚の下に広がるレストランやショップは、まさに「農」と「食」がつながる場所。訪れる人は、豊かな自然とともに、食の楽しさを五感で味わうことができます。
味噌を”主役”にしたマドレーヌ

そんなぶどうの森から生まれたのが、「みそレーヌ」です。使用するのは、発酵の町・金沢市大野地区にあるヤマト醤油味噌の天然醸造「特選味噌」。木桶でじっくり熟成させた味噌を生地に練り込み、香ばしく焼き上げています。
開発のきっかけは、以前から付き合いのあったヤマト醤油味噌の商品でした。同社の醤油を使った生チョコレート(現在は終売)の味が印象に残っていたことや、味噌を生地に練り込んだ「みそロール」などから、「味噌を使って、常温で気軽に楽しめるお菓子ができないか」と試作が始まりました。
最初に完成したマドレーヌは、味噌の風味が上品でおいしいものの、どこか物足りなさが残りました。そこで開発担当の近岡真弓さんが加えたのが、ザラメです。実は、このザラメには社内でも「なくてもいいのでは」という意見があったそうです。それでも近岡さんは、ザラメを加えることで味に奥行きが出ると考え、ザラメ入りでの商品化にこだわりました。
その判断は見事に的中します。焼き上げることで味噌の香ばしさがふわりと広がり、ザラメがカリッとした食感とやさしい甘さを添える。そして最後に、味噌の塩味がふっと口の中に残る。甘さだけでは終わらない、発酵食品ならではの奥行きが、多くのリピーターを生んでいます。
地域ごとの味噌を、お菓子でお土産に
「金沢みそレーヌ」

石川県・ヤマト醤油味噌の特選味噌を使用。金沢駅おみやげ処、小松空港2階売店で購入できます。
「九州みそレーヌ」

大分県・フンドーキン醤油の麦みそを使用。小手川商店、別府銘品蔵、大分銘品蔵で購入できます。
お土産限定商品として、使用する味噌やサイズ、パッケージを変えたみそレーヌを販売しています。現在は、愛知県の八丁味噌を使った新しいみそレーヌも試作中。しかし、八丁味噌は個性が非常に強く、ほかのみそレーヌと同じ配合では味噌が前面に出すぎてしまいます。味噌の配合を少しずつ調整し、焼き加減も何度も試しながら、香ばしさがもっとも引き立つポイントを探っているそうです。
目指すのは全国の味噌でみそレーヌ

「味噌は隠し味として使われることが多いですが、私たちは味噌そのものの個性を楽しんでもらいたいです」と味噌の勉強も続けている近岡さん。
地域によって原料も製法も異なり、それぞれに受け継がれてきた食文化がある味噌。「みそレーヌ」は、そんな地域ごとの味噌の個性を、お菓子という親しみやすい形で楽しめるように生まれました。今後も全国各地の味噌メーカーとの商品開発を進めながら、それぞれの土地ならではの味わいを届けていきたいといいます。
味噌を隠し味ではなく”主役”として味わう。その発想から生まれた「みそレーヌ」は、地域に根付く発酵文化の魅力を、新しい形で伝える焼き菓子として、これからも少しずつ種類を増やしていきそうです。
「本店の敷地には広大なぶどう畑があり、ぶどう棚が圧巻でとにかくおすすめなので、ぜひぶどうの時期に遊びにきてください」と近岡さん。7月中旬から9月下旬がぶどうのシーズンだそうです。みそレーヌはぶどうの森本店敷地内にある「まめや金澤萬久」本店、金沢百番街店、香林坊大和店、金沢エムザ店、松屋銀座とECサイトで購入可能。
【まめや金澤萬久 本店】
石川県金沢市岩出町ハ50-1ぶどうの森敷地内
TEL/076-258-3366
文/秋山昭代
