復刻版!味噌とそばのイイ関係。いつも“ソバ”に味噌を♡

ツルンとのどごしがよく、淡泊な風味と特有な香りのそばは、季節を問わず手軽に食べられるものとして、古くから日本人に愛されてきた。今ではすっかり影を潜めてしまったものの、実は、味噌とそばは非常に深い関係がある。原点回帰で、現代流の味噌とそばの楽しみ方をご紹介。あなたの“ソバ”に、いつも味噌を!


江戸っ子は、そばを味噌味で食していた

江戸時代、味噌と水を混ぜてこした「垂れ味噌」という液体調味料が日常的に用いられており、江戸時代初期の料理本『料理物語』には、味噌一升に水三升五合を加えて三升に煮詰めたあと袋に入れてたらしたもの、と記載がある。「垂れ味噌」は、現代の「タレ」の語源にもなったとされる。また、煮詰めないものは、「生垂れ」という。この「生垂れ」にかつお節を煮出したものが、味噌仕立てのめんつゆ「煮ぬき」で、うどんやそばを食べる際のつゆの他、万能調味料として使われていた。


味噌仕立てのめんつゆアレンジ

【2~3人分】
味噌…100g、水…300ml、かつお節…5g、砂糖…小さじ1


長野・高遠そばに学ぶ、焼き味噌活用術

言わずと知れた信州を代表するグルメといえば、信州そばだ。信州の冷涼な気候は、そばの栽培に適し、古くからそばの名産地として知られる。「信州そば発祥の地」とされる信州の伊那地方は、奈良時代に山岳信仰の高まりで、多くの山が修行の場となった。

修験道※の開祖「役小角」は信州に入った際、あたたかくもてなしてくれた村人に、お礼として一握りのそばの種を渡した。これが「行者そば」のはじまりで、村人たちはこのそばを大切に育て、修行僧等の手によって各地の霊山のふもとに広めたとされる。これが、「山岳信仰の強いところにそば処あり」というゆえんとなっている。

伊那地方を代表する郷土料理に、「高遠そば」があるが、これは、「行者そば」でつくった「辛つゆそば」と呼ばれるものが原型で、焼き味噌、辛みが非常に強い「高遠大根」、ねぎで調味されたつゆが特徴だ。辛い大根の絞り汁に、こんがり焼いた味噌を加えることでマイルドさが増し、そばの淡泊な味わいにぴったり合う。

伊那地方では、戦国時代頃からそば切りが食べられており、高遠藩主・保科正之公は山形最上藩や福島会津藩に移転した際も、そば職人を同行させるなど、無類のそば好きとして知られる。「高遠そば」は、山形や会津に広がり、やがて江戸へと大きく広がることになった。

そばの本場である伊那市には、手打ちそばの名店が多くあり、伊那市観光協会のサイトに掲載されている。自宅で「高遠そば」を再現する場合は、普通の大根おろしに、味噌やおかず味噌をさっと炙るだけでも十分においしい。味噌ファンはお試しを。

※修験道とは、山へ籠もって厳しい修行を行うことにより、悟りを得ることを目的とする山岳信仰を取り入れた日本独特の宗教のこと。

取材協力:伊那市観光協会



そばはスーパーフード

ヘルシーな食品の代表格であるそばは、私たちが生きていくうえで必須の三大栄養素をバランスよく配合する。特筆すべきは、たんぱく質の含有量で、精白米の約2倍、うどんの1.5倍も含まれていること。そのほか、ビタミンやミネラル、酵素も豊富に含まれている。

また、そばが高血圧によいということは古くからいわれてきたが、そばに含まれる「ルチン」は、欧米では血管強化剤として認可されている。血管を強化するには、一日1人前(200g)のそばを食べることが推奨されている。

「薬味」は、毒消し、滋養強壮、消化促進などの薬効が期待されるが、ルチンは、単独よりもビタミンとともに摂取するほうが、効力を発揮するといわれているため、大根おろしや、ねぎなどの薬味と一緒に摂ると、さらによい。

なお、ルチンは加熱には強いが水溶性のため、そばを茹でると湯に3割程度溶け出してしまう。そのため、そば湯も欠かさず飲むのがおすすめだ。


酒飲みにも朗報⁉

そば屋に酒はつきもので、そばとお酒は切っても切れぬ仲。味噌とそばは、酒飲みの害を軽減する食べ物として、古くから知られているが、その理由は、味噌とそばには、「コリン」が含まれているから。アルコールで肝臓に脂肪がつくのを抑えるほか、胃を保護するナイアシンも含まれている。

昔の人々が、酒を飲んだあとに、味噌汁やそばを食べていたのは、実に理にかなっているといえる。


そばのルーツを探る!

日本でそばの栽培が始まった時期はかなり古いとされ、縄文時代の遺跡からそばの花粉が見つかっている。ルーツは、諸説あるが、中国から渡来したという説が有力だ。

種まきから収穫まで2~3か月と短く、荒地でも育つため、貴重な栄養源として全国各地で栽培されてきた。また、栄養価が高く消化もよいため、山間部の人々の主食や、修行僧の常備食としても重宝された。

「そば」の語源は、角を示す「稜」であり、そばの実は、三角錐のような形をしていることから、そう命名された。

現代では、「そば」というと長細い麺をイメージするが、江戸時代に「そば切り」ができるまでは、そばの実をまるごと食べる「そば米」や、そば粉をお湯でこねた「そばがき」などが主流であった。手軽でいて、粋を好む江戸っ子に好評を博し、「そば切り」は一気に広がった。


そば×味噌で絶品おかず味噌

「そば味噌」は、味噌に、そばの実、酒、みりん、砂糖、七味などを加えてつくられる「おかず味噌」だ。香ばしい風味とツブツブ食感は、やみつきのおいしさでおにぎりやつまみに最適。なお、「そば味噌」というと、おかず味噌の他に、「そば麹」を使用した普通タイプの味噌もわずかながら存在する。

【つくりやすい分量】
味噌…100g、そばの実…100g、酒…大さじ2、みりん…大さじ2、砂糖…大さじ2、七味…適宜




参考:「みそ文化誌」(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、「蕎麦の辞典」(著者/新島繋、発行/柴田書店)、「『そば』が語る伝統の味―日本の食文化が育んだ蕎麦 」(著者/小林 尚人、発行/文芸社)、「高橋邦弘の蕎麦大全」(著者/高橋邦弘、発行/NHK出版)

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。