地味めし万歳!天下無双の時短ごはん◎「味噌まんまのススメ」

「味噌まんま」とは、ごはんに味噌汁をかけたり味噌味で煮込んだりした雑炊と、ここに定義する。俗にいう「猫まんま」は、ごはんに味噌汁をかけたもので、よいイメージを持っていない人もいるかもしれない。しかし、「猫まんま」の元祖ともいえる「汁かけ飯」は、長い間、武将や庶民の食生活を支えていたスゴイものだ。

味噌界を代表するご当地グルメには、宮崎の「冷や汁」や江戸の「深川めし」などもあり、考えれば、味噌汁inごはんは、至って普通なのだ。手軽でいて、栄養学的にみても理にかなった食べものであることは間違いない!

毎日食べるごはんは、インスタ映えなんてしなくていい。地味だけど、毎日食べて飽きないのが体に合っている証拠。年末年始の忘・新年会シーズンで食べすぎ飲みすぎで胃が疲れている人にもおすすめ! さぁ、「味噌まんま」を食そう。


味噌は貴重なたんぱく源

味噌の主原料である大豆は「畑の肉」といわれるほど、良質な植物性たんぱく質を多く含む。さらに、大豆が発酵して「味噌」になると、大豆にはない、あっても少量のアミノ酸やビタミン類が多量につくられ栄養価が高まる。昔の人にとって、味噌は貴重な“たんぱく源”でもあった。

味噌の栄養価は、米味噌、麦味噌、豆味噌により若干異なるが、中心となるのは大豆の栄養だ。大豆のたんぱく質は、酵素によって分解され約30%がアミノ酸になり、その中には生命維持に不可欠な「必須アミノ酸」9種がすべて含まれている。

大豆は栄養価が高い反面、煮たり煎ったりといった通常の調理法では消化吸収がよくないのが難点。しかし、味噌の場合は、麹の酵素によって原料が分解されているから消化吸収がよい。

ごはんと味噌汁は名コンビ

「ごはんと味噌汁」はお互いにないアミノ酸を補い合う名コンビ。“具だくさん味噌まんま”にすれば、 だしや具材の栄養価も加わり、これ一品で立派な主食になる。

武士の愛食「汁かけ飯」

「武家にては必ず飯わんに汁かけ候」
武家奉公人としての心得や諸作法、先人の教訓などをまとめた『宗五大草紙』より

鎌倉時代から戦国時代にかけては、ごはんに味噌汁をかけて食べる「汁かけ飯」が一般的であった。身近な食材で簡単につくれ、飯と、野菜や魚介類などが一度に素早く食べられることから、質素倹約を奨励していた武士にとってかっこうの食べ物であった。下品な習慣とは考えられていなかったのだ。

「汁かけ飯」が最も威力を発揮するのは、戦国時代。武士たちは、戦闘能力を作用する兵糧に重大な関心をもっており、特に米と味噌を大切にしていた。

武士たちが重要視したのは、短時間で食べられ、かつ栄養があり腹持ちのよい食事。急に出陣が決まったときでも、「汁かけ飯」なら即座に腹ごしらえができ、気持ちを落ち着かせることができる。まさに、「腹が減っては戦ができぬ」。ごはんにお湯をかけて、焼き味噌を添えてかきまぜるパターンもある。

味噌をとると体力がつくだけでなく、頭の回転も速くなり、集中力が増すから直感力を研ぎ澄ますことができる。常に死と隣り合わせの戦場では、ちょっとした気のゆるみが命とりになりかねない。武将たちは、いかに食べ物の質が大事かをよく知っていたのだ。現代は、迷うほど食べものがある時代だが、基本となる食事は戦国武士から学ぶべきことが多い。

雑炊の元祖「みそうず」とは?

食べるとほっとして、心まで温めてくれる雑炊。今の季節、鍋の〆には最高だ。雑炊とおじやの定義はあいまいで、地域によっても認識が異なるが、簡単にいえば、どちらも炊いたごはんをスープと一緒に煮た料理といえるだろう。

雑炊の歴史を紐解くと、はるか平安時代までさかのぼり、天皇即位の際には、鴨雑炊を食べる風習があったとされる。雑炊の由来には諸説あるが、古くからあった飯を味噌味で煮る「みそうず(増水)」がルーツとされている。やがて、さまざまな具材を入れるようになり、江戸時代には「雑炊」と呼ばれるようになった。

塩で味をつけたものを「粥」、味噌で味をつけたものを「雑炊」とはっきり分けて呼ぶようになったのも、江戸時代からとされる。

「冷や汁」
焼いたアジなどを味噌と合わせて、 だしでのばし冷やしたものを、炊き立ての麦飯にぶっかけて食べるもの。暑さで食欲が落ちる夏場でもスルッと食べられる。全国的に食べられているが、特に夏の暑さが厳しい宮崎の風土に適して、郷土料理として定着している。
【深川めし】
江戸時代、深川地区(現在の東京都江東区一帯)は海で、漁師の町として栄えていた。当時、漁師たちにもてはやされていたのが、アサリやハマグリなどを味噌味で煮込んで熱いごはんにぶっかけた「深川めし」だ。忙しい漁の合間でも、手早くさっと食べられる。弁当に持っていけるように、むき身をごはんと一緒に炊き込むタイプもある。
【おみいさん】
里芋や大根が入った味噌味の雑炊で、徳島の家庭料理。家庭によって味や具が異なり、雑炊といいながら、 汁気がないのが特徴。米が貴重だった時代、豊富に採れる大根や里芋でかさを増して食べたのがはじまり。おみいさんの「お」は尊敬語、 「みい」は味噌、「さん」は「お」 と同じ尊敬語。「味噌入り」からきたという説もある。「冷や汁」とは、焼いたアジなどを味噌と合わせて、 だしでのばし冷やしたものを、炊き立ての麦飯にぶっかけて食べるもの。暑さで食欲が落ちる夏場でもスルッと食べられる。全国的に食べられているが、特に夏の暑さが厳しい宮崎の風土に適して、郷土料理として定着している。


一生味噌まんま宣言!

子育て中のお母さんに聞いてみると、「味噌汁かけごはん」を子どもに食べさせている、という人は結構多い。ごはんが柔らかくなって食べやすいし、消化吸収もいいから子どもやご年配層にもぴったりといえる。“味噌汁なら安心”というお母さんからの絶対的な信頼感もある。

ちなみに、赤ちゃんが生まれてから 100 日目に行う「お食い初め」では、一生食べることに苦労しないようにという願いを込めて、尾頭付きの鯛を含んだ一汁三菜を食べるが、味噌汁の上澄みを飲ませる人も多いようだ。

おぎゃあと生まれてから「味噌まんま」を食し、働き盛りの年代も味噌で力をつけ、年をとっても「味噌まんま」を食べる。「味噌まんま」は、家族全員が笑顔になれる万能食だ。

参考:『武士のメシ』(著者/永山 久夫、発行/宝島社)、『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会)

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。