味噌汁はアスリートに最適!と太鼓判を押すのは、かつてラグビー日本代表のキャプテンを務めた廣瀬俊朗さん。現在は、さまざまな分野で挑戦を続ける廣瀬さんと味噌の魅力について話しました。味噌を一言でたとえるならば、味噌はス・ゴ・イ!
藤本●ラグビーワールドカップ2015の日本代表の快進撃は、ものすごかったですね。歴史に残る偉業を成し遂げられた廣瀬さんですが、まずはご自身のラグビーとの出会いについて教えてください。
廣瀬●5歳のとき、両親の薦めでラグビースクールに通い始めたのがはじまりです。父親は体育の教師だったので、幼い頃はよく公園でラグビーをして遊んでもらいました。中学時代はラグビー部に所属しながらラグビースクールに通い、練習以外でも時間を見つけてはプロの試合を研究するなど、まさにラグビー三昧。高校時代は、ラグビーと同じくらい勉強にも励み「文武両道」を心がけました。この習慣は、その後、自身を大きく成長させる糧となりました。
藤本●中学、高校、大学、社会人、そして日本代表と、いずれもキャプテンを務められましたね。きっと私たちには想像できないような努力と経験を積み重ねられたのだと思いますが、現役時代、一番大切にされていたことはどんなことですか。
廣瀬●練習に真剣に取り組むことは当然、キャプテンという立場上、とにかく「どうしたらいいチームになるか」「どうしたら勝てるか」を人一倍考えていたと思います。学生時代から、率先して練習メニューや戦術を監督に提案したり、チームワークの強化を狙ったしくみを取り入れたり。結果が出たときはとてもうれしかったです。たくさん悩んだ時期もありましたが、自分の強みを突き詰め、自分なりのスタイルを見つけられたと思います。
藤本●日本代表時代のエピソードを教えてください。
廣瀬●とにかく「全国のラグビーファンを幸せにして、新しい歴史を築くこと」を目標にしていました。大切なのは、勝つためにプレーするのではなく、勝つことでラグビーの素晴らしさを伝えること。そのために、チームメンバーそれぞれの個性や特技を生かし、活躍できる環境づくりを常に意識してきました。各自が実力を発揮でき、リスペクトし合える強力なチームワークがあったからこそ、結果を出せたのだと思います。
藤本●日本代表の皆さんのご活躍は、ラグビーファンのみならず、多くの国民に希望を与えてくれました。詳しくは、『なんのために勝つのか。』(東洋館出版社)を読んでもらいましょう。廣瀬さんが現役時代に奮闘された様子、ラグビーやチームへの思いがストレートに伝わってきて、正直感動しました。読み終えて、立場は全く違いますが、私も与えられた環境でチャレンジし続けたいと思います。
廣瀬●自分の経験が、何かしらの行動の後押しになったらうれしいなぁと。そんな思いで執筆しました。
藤本●2016年に現役を引退してからは、メディアやイベント出演、スポーツキャスターなど、多方面でラグビー普及に貢献されていますね。そのほかTBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」では俳優業もこなすなど、マルチな活躍に注目が集まっていますが、現在の活動について教えてください。
廣瀬●演じるのは初めてでしたが、ラグビーの魅力を伝える契機になればとお受けしました。スポーツの普及、次世代リーダーの育成、アスリートたちの引退後のサポートなどを目的に、昨年、株式会社HiRAKUを設立しました。社名には「自分らしく生きる価値を、切り開く」という意味が込められています。そのほか、有志で立ち上げた「一般社団法人アポロプロジェクト」の専務理事を務めています。スポーツ界で華々しい活躍を遂げたアスリートも、一生その舞台で戦い続けることはできません。アスリートが生涯にわたり実力を発揮でき、その価値を社会に還元できるしくみを創造していきます。
藤本●ここからは本題です。廣瀬さんが「味噌」に関心を持たれていることは以前からメディアで拝見しており、ずっとお話を聞いてみたいと思っていました。味噌との出会いを伺ってもいいですか。
廣瀬●1年くらい前、知人から味噌の話を聞いたのがきっかけです。アスリートなので、食や健康、予防医学といったことにはもともと関心がありましたし、今後の目標の一つに「日本らしさをアピールすること」があったので、「味噌」にビビッときたのです。
藤本●味噌汁の思い出などあれば、教えてください。
廣瀬●子どもの頃から味噌汁は大好きで、欠かさず飲んでいました。大阪出身なので、特に特徴のある味噌に親しんでいたわけではなく、一般的な信州系の味噌が食べ慣れた味です。ラグビーの練習のあとにチームメイトたちと食べた「豚汁」の味は忘れません! 最高のご褒美でした。
藤本●子どもたちが健康で、思いっきりスポーツを楽しめるようにと、お母さんが愛情を込めてつくっていたのでしょうね。味噌に、肉や野菜が加わった「豚汁」はまさに栄養の宝庫。「豚汁」というと、子どもたちは、目の色を変えてやってきますね。恐るべし、豚汁!
廣瀬●アスリートにとって、味噌汁は最高の栄養ドリンクといえます。腸内環境を整え、運動前に飲めばスタミナ源になり、練習後に飲めば疲労回復のサポートになります。信頼する先生からは、疲労が溜まったときは「シジミの味噌汁」が効くと教えてもらいました。
藤本●味噌の主原料である大豆は、良質の植物性たんぱく質を多く含み、さらに発酵することで栄養価が高まるだけでなく、消化吸収がよい状態になります。さらに味噌汁としていただけば、具材由来の栄養素も摂れるというすぐれものです。
廣瀬●そして、なんといっても一番はおいしいこと。まさに「味噌はスゴイ!」ですね。
藤本●味噌ほどスゴイ食品はないと思っていますが、廣瀬さんにそう言っていただくと説得力が増します。
廣瀬●知れば知るほど、味噌は日本が誇る食品だと思えます。これからもっと味噌の勉強をしていきたいです。
藤本●私は毎日100gの味噌を食べていますが、めちゃくちゃ健康で、悩みだった肌荒れも治りました。味噌汁を飲むと、体がシャキッとなってテンションが上がります。
廣瀬●「テンションが上がる」はなかったですが(笑)、味噌汁があるとホッとしますね。特に海外遠征のときなど、そのありがたさを実感します。
藤本●以前、7人制ラグビー・セブンズ世界大会のPRの一環で、選手の方々にインタビューをしましたが、やはり味噌汁は欠かせないそうです。マラソン選手には、ランニング中に味噌を舐めるといいと聞きました。現役時代はどんな食事をされていたのですか。
廣瀬●ラグビーはチームスポーツですが、個人の体調管理は基本であり、マナーだと考えていました。現役時代は玄米とそばを主食にし、味噌汁も積極的に食べるようにしていました。ほかにも、肉を控えて魚中心、水を多く摂る、お酒はほとんど飲まない、早寝早起きなどを徹底していました。自分で料理はしませんが、できる限り有機食品や無添加食品を使い、日々バランスのよい食事をつくってくれる妻に、感謝しています。
藤本●味噌に目覚めてから、生活は変わりましたか?
廣瀬●今まで以上に、味噌を摂るようになったし、地方出張の際も、味噌の商品を見つけると思わず買ってしまいます。味噌は、その土地の文化や歴史と深く関係していますね。しかし、各地の味噌蔵さんがどんどん消えている現状には、心が痛みました。
藤本●若者の味噌離れもそうですし、家庭で味噌汁を飲む子どもたちが減っています。これほど便利で豊かな時代にあって、自殺やいじめ、虐待、若者の生活習慣病の増加など問題は山積しています。そして、これは食生活の変化も関係していると思います。味噌は長い歴史の中で、日本人の体だけでなく心の健康も担ってきました。味噌で日本を元気にすることが、私の目標です。
廣瀬●さまざまな活動をしていますが、一貫していえることは、サステナブルな社会、誰もが個性を生かして活躍でき、幸せな未来を描ける世の中を創造する仕事に携わりたいです。スポーツ業界の発展はもちろん、さまざまな社会問題を解決していく一助になればと。味噌は、何をするにも欠かせない「健康を支える」という点で関連してくるのではと思っています。
藤本●お話を聞いていて、ふと「味噌は和食界のキャプテンだ」と思いました。国民食としての地位を確立し、日本人の生活を支えてきた味噌=台所のキャプテンのような存在。世界に通用するチームをつくり上げた廣瀬さんが「味噌」に開眼されたのも、偶然ではなく必然のような気がしてきました。廣瀬さんの思い×味噌でスゴイことができそうですね。今後の味噌活に期待しています!
廣瀬●味噌には大きな可能性を感じていて、日本を代表するヘルシー食品として、イノベーションを起こせないかと考えています。日本らしさを海外にアピールするにも、味噌は最適だと思います。まずは私自身が、味噌を学び、味噌を楽しむことからでしょうか。コロナが落ち着いたら味噌蔵さんを訪ねてみたいし、味噌仕込みもやってみたい。「味噌フラペチーノ」や「味噌スイーツ」も面白いし、いつか「味噌カフェ」みたいなものもできたらいいですね。
藤本●幅広いご活躍でお忙しいと思いますが、これから廣瀬さんの「味噌度」がさらに高まり、今後味噌の魅力もアピールしていただけたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。
廣瀬●モットーは「常に進化し続ける」。日々の積み重ねを大切にしている私ですが、味噌汁は常にそばで支えてくれる存在ですね。一緒に味噌活を楽しめたらと思います。よろしくお願いします。
【取材を終えて…】
私の話にじっくりと耳を傾け、一つひとつ丁寧にお答えくださった廣瀬さん。真面目でやさしいお人柄が伝わってきました。これまでラグビーで多くの人々を幸せにしてきた廣瀬さんですが、これからもさまざまな世界でその経験と知識、情熱を開花させ、進化し続けるのでしょう。ますます目が離せません!(藤本智子)