矢ノ目糀屋・川端徹さん&川端由美さん「蔵に新たな息吹を

古くから「紅花の里」として知られる山形の河北町にある「糀屋カフェたんとKitchen」。東京で給食の調理員として働いていた川端夫妻は、由美さんの親戚にあたる糀屋の跡継ぎがいないことを知り一念発起。「矢ノ目糀屋」の屋号を継ぎ、新たな工房と一緒にカフェをオープンした。その背景に込められた思いとは。
(聞き手/藤本智子)

プロフィール
川端徹●1970年東京都出身。
川端由美●1971年山形県出身。
給食の調理師として勤務後2013年より山形県に本拠を移し、四代目「矢ノ目糀屋」として開業。2015年「糀屋カフェたんとKitchen」をオープン。

矢ノ目糀屋について教えてください。

初代・矢ノ目五八が戦後間もなく、山形県村山市大久保の地で「矢ノ目糀屋」を開業したのがはじまり。その集落の人々は、新米ができると前年の残った米を糀屋に持ち込み、家族一年分のみその種を仕込んでもらい、自宅で熟成させるのが慣例でした(「仕込みみそ」と呼ばれるもの)。「矢ノ目糀屋」は、その集落で長きに渡り愛されてきましたが、三代目が体調を崩し、やむを得ず暖簾を下ろすことに。いてもたってもいられず、夫婦で一念発起、3年の準備期間を経て、四代目として再起を果たしました。

開業時のエピソードを教えてください。

開業を決意してからは、仕事をしながら山形へ通い三代目から糀づくりを学びました。東京でも練習しましたが、なかなかうまくいかず苦戦したことも。もともと2人とも給食の仕事をしていたため、大量につくる作業に抵抗はなかったのですが、生きた菌を扱う糀づくりは、調理するものではなく、育てるもの。一家で山形に移り住み、2013年に糀とみその製造を開始。2015年に築100年の蔵を改装し、念願だったお店「糀屋カフェ たんとKitchen」をオープンしました。学校で使わなくなった机や椅子を譲り受け、漬物樽を机にアレンジするなど、インテリアにもアイデアをふくらませ、あるものを有効活用しました。

糀屋カフェ たんとKitchenの反応は?

子連れでものんびりランチを楽しめると、特にお母さんたちに好評です。クチコミやSNSの発信をキャッチし、遠方からの来客も多く、定期的に行っているみそ仕込み教室では「みそ汁を飲みたい!」と言ってくれる子どもたちの言葉に感動します。お店の特徴は、原料となる糀をつくっている本人たちが運営しているということ。私たちが目指しているのは、「心に残る郷愁の味」。それを伝える場として、このお店はなくてはならない場だと感じています。

看板商品「五八みそ」の特徴は?

初代、矢ノ目五八の名を冠した「五八みそ」は、秘伝の黄金比の配合で、完全手作業で仕込みます。この地で古くから食べ続けられてきた、糀の粒が残っている贅沢な米みそです。「五八みそ」は、米の割合が大豆の1.5倍という甘口テイスト。熟成させるのは、代々、受け継がれてきた大小さまざまな木製樽。その時々で微妙に異なる味を、楽しんでいただけたらと思います。

おすすめのみそ料理は?

人気メニューは、たっぷりの野菜に糀やみそを加え、3日間かけて煮込んだ「糀屋のカレー」です。フルーツやスパイスをブレンドし、素材の旨みを凝縮した、コクのある味わい。お子さんにも喜ばれるまろやかな味が特徴で、辛口をお好みの方には、特製「辛みそ」を加えてお召し上がりいただきます。「みそたまり」をカラメルソースにした「みそプリン」など、みそや甘酒を使ったスイーツもご用意しています。コーヒーや甘酒は、サクッとした「みそメレンゲ」と一緒に優雅に味わってください。

夢を聞かせてください。

昔は各家庭に必ず樽があり、おばあちゃんがみそを仕込んで食べていましたが、核家族化が進み、いつしかそんな風景も見られなくなりました。好きなときに好きなだけ食べ物が購入できる便利な時代。けれども、昔ながらの人々の生活の中に、大切なモノが残っていて、その最たるものが、みそや糀だと感じています。地域に根差した糀屋だからこそ継承できたモノや人々とのつながり…、それを次世代に伝えていきたいと思います。

糀屋カフェ たんとKitchen(矢ノ目糀屋)
山形県西村山郡河北町谷地甲90
TEL/0237-85-0330
営業時間/10:00〜19:00
※カレーなどカフェのフードメニュー提供は木・金・土のみ
定休日/日曜、毎月8日・28日

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