雨の日も風の日も糀をつくって320 年

大阪堺市にある「糀屋雨風」は、雨が降っても風が吹いても商いを休まないことから名づけられた。1689 年創業、醤油醸造業に始まり、糀づくりを続けている老舗の蔵だ。味噌や醤油、日本酒など発酵食品の製造に欠かせない糀はどちらかといえば裏方で、消費者が目にすることはあまりない。しかし数年前、甘酒や塩糀ブームに火が付いてからというもの、その存在は多くの人に知られるものとなった。

豊田実さん

糀屋の繁忙期は冬。だが現在は、夏もフル稼働。「当社の糀は木桶で米を蒸したあと、木もろぶた箱を使用し、約4日間かけてつくります。手間隙はかかりますが、代々受け継がれてきた製法を守り、誠心誠意糀づくりに励んでいます」と十五代目の豊田実さん。

味噌づくりは糀が命。手間暇かけてつくった糀を使用し、新鮮なうちに仕込むのだから、おいしくないはずがない。中でも一番人気の「元禄堺みそ」は、糀と大豆を1対1の割合で仕込み、木桶で1 年じっくりと熟成。十分に塩なれしたクセのないまろやかな味わいは、職人のなせる技。

糀の新たな魅力を発信すべく、ドーナツ店と「甘糀焼ドーナツ」、昆布店と「塩糀昆布」をつくったり、糀をそのまま食べる「粉末糀」を開発したりと、新しい取り組みにも積極的。昨年は、糀の魅力をもっと伝えたいと、蔵の横に「糀カフェBio topos」をオープン。糀を使ったランチのほか、糀ドリンクやジェラート、プリンなどのデザートも豊富。甘味料不使用なのに驚くほど甘く、ヘルシー志向の女性に大人気。まるでリゾートに来たような気分を味わえる店だ。

「糀はどんな食材とも相性がよく、無限大の可能性を秘めている。商品化のアイデアもいっぱいあるので、一つずつ実現していきたい。素晴らしい日本の伝統文化である糀の魅力を国内外に伝えていきたいですね」(豊田さん談)。

【株式会社雨風】
大阪府堺市西区津久野町3-32-11
TEL/072-262-0333

関連記事

  1. 阪急うめだ本店 みそまる

    阪急うめだ本店「今日からみそ活始めませんか?」

  2. 平田こうじ店・平田康高さん「子どもたちに正しい味覚を伝えたい」

  3. 第45回 ジャポニックス「彩食展」

  4. 佐々長醸造・佐々木洋平さん「若い世代に味噌をもっと食べて欲しい」

  5. 糀屋川口・川口恭さん「自分の目で見て納得することを大切に」

  6. GENMAI × MISO「発酵フェスタ」で「みそまるトークショー」