「みそしるぼうや」こと村瀬峻史 さん(31歳)は、「人と味噌の出会い方を変える」をスローガンに掲げ、活動を開始。2014年よりイベント開催や蔵元のPR、商品企画に取り組むほか、昨年は台湾で開催されたイベントで「みそしるスタンド」を出店するなど、活躍の場を広げている。
昔から、食への好奇心と探求心が旺盛だった。学生時代は、世界中で深刻な問題となっている「砂漠化」に関心を持ち、荒れ果てた土地でも持続可能な食料生産ができる仕組みを勉強。卒業後は、有機野菜の宅配業者など食に関する仕事に従事し、主にバイヤーとして経験を積んできた。現在も、食のベンチャー企業で働く傍ら、活動を続けている。生産者の魅力を引き出すこれまでの経験が、味噌の分野でも生きている。
活動のきっかけは、尊敬する農家や酒蔵の人々から、「発酵」を通して生き方を学んだこと。「微生物たちが心地よく働けるよう、環境を整えるのが人間の仕事」という言葉が印象的だった。
見えない微生物たちが醸し出す「発酵」の世界の奥深さや自然の摂理から、人間は自然の一部であることを実感するとともに、自分の内面を深めたいと感じた。以来、発酵の世界にのめり込み、自身で味噌や甘酒をつくったり、発信を続けたりしている。
思い出深いのは、「日本一手間のかかる味噌づくり」と称して農家さんの畑を借り、大豆栽培から味噌を仕込むイベントを企画したことだ。
愛知県出身の村瀬さんは、子どもの頃から味噌に慣れ親しんで育った。小さな仕出し屋を営む家族の食卓には、いつも「赤だしの味噌汁」があったそうだ。食卓にはその家独自の文化や思い出があり、味噌汁はまさにそれを象徴するもの。
しかし現在は、洋風化や孤食化が進み、味噌汁が食卓にのぼる機会が減っただけでなく、味噌を選ぶ判断基準がそもそも少ない事実を知った。「毎日のように食べるものだからこそ、愛着のある味噌と出会ってほしい」そんな思いから、「みそしるぼうや」としての活動を続けている。
「単なる商品の枠を越え、一杯の味噌汁から愛着のわく食卓を増やしていきたい。大好きな味噌蔵の熱意や世界観を伝え、味噌との出会いや体験の機会、新たな消費サイクルをつくるしくみをつくることが目標です」と笑顔で語る。
現在、地域の味噌蔵と消費者をつなぐ挑戦のための準備を進めており、こだわりの味噌蔵パートナーを募集しているそうだ。
最新の活動など、詳しくはホームページで。