落語家 三遊亭竜楽さん「7か国語で演じる古典落語『味噌豆』の世界」

定吉と旦那のやりとりが可笑しい古典落語「味噌豆」を、日本語を含め、英語、フランス語、英語、イタリア語など7 か国語で演じる前代未聞の落語家、三遊亭竜楽師匠。一人で何役もこなし、身振り手振りで豆を煮たり食べたりするシーンを表現。何もないのに、その場の「絵」が見えてくるからスゴイ。最後のオチは笑いの嵐! 国境の垣根を越えて愛される竜楽師匠の素顔に迫りました。(聞き手/藤本智子)

普段のお仕事について教えてください。

これまで、国内での独演会ほか、ヨーロッパやアメリカなど9 か国45 都市で、字幕・翻訳に頼らない現地語による約150 公演を行ってきました。「2 か月の準備期間で、世界中どの国でも現地語公演を行う」がモットーです。また、「笑いとコミュニケーション」をテ―マに、年間40 本近い講演会や執筆活動も行います。「笑い」は専門家だけの特別なものではなく、人とのコミュニケーションを円滑にしていく最高の手段だということをお伝えしています。

落語家になろうと思ったきっかけは?

大学卒業後、弁護士を目指して司法試験を受けましたが、自分には向いていないと実感。気分転換に通っていた寄席で落語に魅了され、27 歳で入門を決意。周囲は腰を抜かすほど驚きました。なぜなら、私が人前で話すのが苦手だったからです。しかし、どうしても諦められず、「一番できなかったことをやろう!」と落語の世界へ飛び込みました。遅いスタートの焦りに加え、厳しい上下関係の世界。先輩の「面白くない!」の一言に落ち込むこともありましたが、コンプレックスをバネに稽古に取り組み、1992 年に真打ちに昇進しました。

なぜ外国語落語を始めたのでしょう?

イタリア公演の依頼があった際、渡航費も出ず、字幕の費用もないことが判明。知人だったので断れず、「イタリア語でやりましょう」と言ってしまったのが、外国語落語を始めたきっかけです。日本語と現地語を併用するスタイルで「ちりとてちん」を演じてみたら大好評。「落語は世界で受け入れられる」と確信した瞬間でした。現在、8 か国語を制覇。翻訳が届くと、まずは全文をカタカナにして丸暗記。ひと通り覚えたら、実際の発音やイントネーションが本物に近くなるよう何度も修正し、完成していきます。

海外公演の際に感じることは?

海外では、みそを知らない人もたくさんいます。もちろん、大豆を煮るシーンも想像がつかないし、丁稚と主人との関係なんて外国人にとっては想定外。江戸時代の生活様式を全くイメージできないという点は、国によって差があるものの、外国人と日本の子どもは、笑うツボが同じ。けれども「味噌豆」がウケるのは、「落語」という文化的質の高さと珍しさ、巧みな話術とパフォーマンス力ではないでしょうか。

みそはどんな存在でしょうか。

なすやキャベツ、たまねぎなど、幼い頃から野菜たっぷりのみそ汁が大好きです。群馬県出身なので、みそはふるさとの味、「上州みそ」が落ち着きます。食事は塩分量に気をつけていますが、おかずを減らすことはあっても、みそ汁は欠かしません。海外出張でみそ汁が出てくると、よりありがたみが増しますね。ハードスケジュールをこなすには、健康第一。みそ汁は、元気の源です。

今後の夢を教えてください。

今後は、さらに言語のバリエーションを増やしていき、オペラやミュージカルのように、落語という文化を世界に定着させたい。また、海外での活動から得たものをフィードバックして、これまで「落語」に縁のなかった日本の方々にも、その魅力を伝えていきたいです。

「三遊亭竜楽の七か国語落語~味噌豆編」
スロウボールレコーズ

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