すみだの大豆専門問屋・株式会社丸金の金原朋子さん「在来品種の大豆の魅力を伝えたい」

東京都墨田区にある大豆専門問屋・株式会社丸金の金原朋子さんに、普段のお仕事や在来品種の大豆の魅力、開店準備中のおぼろ豆富・ゆば・豆乳専門店「まめ乃家」などのお話を伺いました。

聞き手/秋山昭代

【金原朋子さんプロフィール】
茨城県出身。大学卒業後、旅行会社や貿易会社勤務などを経て株式会社食品産業新聞社に入社、大豆部門の記者として勤務。2014年に株式会社丸金に嫁ぎ、現在は事務や広報など幅広く担当。また、フリーランスのライター兼カメラマンとしても活躍中。

普段のお仕事について教えてください。

弊社の経営理念は、“大豆でつながるSmile&Happy”。単なる流通の中間業者としてだけではなく、大豆の新たな価値の創造を目指し、豆腐や味噌メーカーさん、農家さん、そして消費者の皆さんを繋ぐ架け橋のような存在でありたいと考えています。

家族経営の小さな会社で、夫が代表取締役、夫の弟が専務取締役、夫の母が経理・事務を担当、それから配達担当の社員が1名おります。私は前職の記者の経験を生かし、広報としてホームページやSNSで発信したり、新商品の開発や新店舗の立ち上げなども担当したりしています。

大豆に魅了されたきっかけは?

以前は、大豆専門の記者ではありましたが、いざ、自分が大豆問屋の3代目である夫と結婚して、大豆業界の“中の人”になったことで、大豆や味噌への見方が変わった気がします。

ターニングポイントは2つあり、1つは当事者として大豆の産地に行き、種まきから収穫、そして、味噌や醤油づくりを体験したことです。表面的なことだけでなく、食べ物の本質の部分を見るように意識が変わりました。

もう1つは、ドキュメンタリー映画『いただきます みそをつくるこどもたち』と、続編の『いただきます ここは、発酵の楽園』を観たことです。

“食べたものが私になる”というテーマの映画で、微生物を介して土と自分、また、食べ物と自分が繋がっているということに気づかされ、食に対する価値観や考え方が大きく変わりました。

オリジナルの味噌について教えてください。

国産の在来品種の大豆は、やさしい甘みと風味豊かな味わいが特徴。また、品種によって味わいも変わります。

弊社では、栃木県宇都宮市にある大和屋味噌麹店さんという老舗の味噌屋さんにお願いし、さとういらず、音更大袖振、ミヤギシロメなどの在来品種や、在来品種ではありませんが秘伝豆や丹波黒など特徴ある大豆で味噌を仕込んでもらっています。

それぞれの大豆に優劣つけがたい魅力があるのですが、あえて「これがオススメですよ」とは言わず、お客様に思い入れのある大豆を選んでいただき、それに合わせてオーダーメイドの味噌をつくるプロジェクトも行っています。

例えば、宮城県出身の方でしたら「ミヤギシロメ」、農家さんと繋がりがある場合はそこの大豆を使うなど思い入れのある大豆を選ぶことにより、想いやストーリーも伝えられるのではないか、と考えています。

在来品種の大豆の魅力を伝える「まめ乃家」とは

大豆の面白さ、魅力を自ら伝えていきたいという想いから、おぼろ豆富・ゆば・豆乳専門店「まめ乃家」のオープンを目指し活動しています。

在来品種の大豆は、風味が抜群で豆が甘くてとてもおいしいです。品種改良されておらず、昔からその土地で受け継がれてきたという点にもロマンを感じます。

素晴らしい大豆であるにもかかわらず、栽培に手間がかかり収量も少ないため、大量生産・大量消費、効率化を重んじる時代に変わるとともにつくり手が減ってしまっています。品種改良を否定しているわけでは決してなく、安定的に大豆を供給するといった点では大切だと思います。

ですが、大豆本来の持つおいしさ、そしてその土地だからこそ生まれた風味、個性は価値あるものだと思います。それを無くしたくない、未来に繋いでいきたい。大量につくれないからこそ、その地域の豆腐店さんが使うのが一番いいと思うのですが、高齢化や後継者不足などにより豆腐店は激減、廃業が続いています。

そんな中、では自分たちがこの大豆を使って、在来品種の大豆の魅力を表現できるようになろう。そして、豆腐屋さんをやりたい!豆乳屋さんをやりたい!という若い方を増やしていきたいと思っています。

読者に一言お願いします。

小さくてかわいらしい大豆の花言葉は“可能性は無限大、必ず訪れる幸せ”。私たちも何度もこの言葉に勇気づけられ、助けられてきました。

新店舗を楽しみにしてくださっているお客様も多いので、一日でも早く「まめ乃家」をオープンできるよう、頑張ります。「まめ乃家」の開店を楽しみにしていてください。

「まめ乃家」の新着情報は、FacebookInstagramをご覧ください。

【株式会社丸金】
東京都墨田区東駒形2-4-12丸金ビル1階
TEL/03-3621-1166
※業務用のお取り扱いのみ。

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