「性差医療専門医」とは聞き慣れない言葉ですが、女性には肝臓病が少ないことから、性差による医療や医学研究の必要性を唱え、長年、パイオニア的な研究を続ける清水一郎先生。生活習慣病や老化を予防するには「女性ホルモン」が重要なカギ。そして、日々の生活習慣や食生活が大きく関係するのだそう。「老いない美人」を目指すには…。(聞き手/藤本智子)
清水先生のお仕事について教えてください。
35 年以上、内科医師として肝臓病を中心とした内科診療に携わってきました。が、仕事と研究に没頭した20 代後半から肥満が進行し、高血圧に。挙句の果ては、糖尿病患者となってしまいました。そこで4 年前、超不規則な内科医勤務を辞し、昇和診療所(横浜市)院長として在宅訪問診療のみを行っています。時間に少し余裕ができたので、糖尿病を治すために一念発起。スポーツとは無縁だった私がマラソンに水泳、慣れない料理教室にも通い、1 年で25kg の減量に成功。薬も使わず、完治が難しいといわれている糖尿病を撃退。その経験から、現在は生活習慣病などの病気や老化防止についての執筆活動も行っています。
若返りホルモン「エストロゲン」の働きとは?
女性が同年代の男性よりも生活習慣病などの病気が少ない理由は、女性ホルモン「エストロゲン」が存在するから。「エストロゲン」が、女性をさまざまな病気から守るほか、女性らしさを生み出し、睡眠や便通、血液の流れをよくし、心を穏やかに保つ働きがあるのです。「若返りホルモン」と呼ばれる理由はそこにあります。
みそは体にどういいのか。みその魅力を教えてください。
みその主原料の大豆には、「エストロゲン」に匹敵する若返り作用の成分「イソフラボン」が豊富な上に、みそは、発酵過程で栄養価が高まり、消化吸収がよく、含まれる食物繊維や適度な塩分は腸内環境を整えて便秘対策や身体を温めて冷え対策になります。欧米諸国の女性に比べ、日本女性の更年期障害の症状が軽い理由は、みそを含む大豆製品を多く食べているからです。高血圧の人だって、一日一杯(1.5g 程度)なら問題はありません。栄養バランスの良い食事に毎日のみそ汁は不可欠なのです。
食生活以外にどんなことに気をつければよいですか?
加齢と共にエストロゲンが減少するのは避けられないので、有効活用することがしなやかで美しく女性らしい身体を保つカギです。良質な睡眠、ストレスと上手につきあうことはいうまでもありませんが、運動するとエストロゲンの分泌が増えます。特に下半身の筋肉を鍛えることが有効で、一日計30 分のウォーキングから始めるのがおすすめです。運動すると「幸せホルモン」のセロトニンも分泌され、肌の新陳代謝を促し、美しいツヤとハリが生まれます。
今後の目標、伝えていきたいことは何ですか?
生活習慣や食生活の大切さを身をもって体験したので、人々が笑顔で健康で美しくいられるお手伝いができればと思っています。何事も「ひと手間かけること」を実践してください。私自身、意識をちょっと変えただけで、以前は苦手だったスポーツも料理も、今は楽しくて仕方がありません。性差医療専門医として、女性の研究本を2 冊出したので、今度は、男性についての研究をまとめています。