味噌の原料は大豆・麹・食塩と、とてもシンプルですが、一口に味噌といってもたくさんの種類があります。原料や配合、環境、水質、微生物の働きなど、さまざまな条件が複雑に関わり合うことで、全国津々浦々、個性豊かな味噌がつくられているのです。
味噌には、原料、色、味、産地等さまざまな分類方法がありますが、今回は「味による分類」についてご紹介します。
味の違い、注目①は塩分量
味噌の味は、辛口味噌・甘口味噌・甘味噌に分類されます。まず、注目すべきは、味噌の塩分量です。寒い地方ではやや塩分の高い辛口が多くつくられ、暖かい地方では甘口の傾向が強いです。また、基本的には、塩分が低いものは短期熟成、塩分が高いものは長期熟成となります。
辛口味噌…塩分12%前後
一般的によく使われているオーソドックスな味噌で、汎用性の高さはピカイチ。味噌により味わいはさまざまですが、大豆の旨味を強く感じられ、すっきりとしたものが多いです。
甘口味噌…塩分10%前後
辛口味噌より少し塩分控えめなマイルドなテイストです。甘口といってもお菓子の甘さとは異なり、しょっぱさの中に米麹由来のやさしい甘味が感じられます。お子さんにもぴったりの味わいです。
甘味噌…塩分6%前後
辛口味噌に比べ、塩分は半分程度の超甘口です。関西白味噌や江戸甘味噌などが代表的で、味噌汁用ではなく味噌漬けやぬた、スイーツなど調味料として使われるのが一般的です。酵母や乳酸菌などの微生物の働きを利用せず、麹の「酵素」の働きで熟成させます。
味の違い、注目②は麹歩合(こうじぶあい)
味噌の味わい(辛さ加減)の決め手は「食塩の量」と「麹歩合」(麹割合)です。「麹歩合」とは、大豆原料に対する麹原料(米・麦)の割合のこと。よくパッケージに「○割麹」と記載されていて、味噌選びにとても役立つ便利な指標です。
10割麹の場合…大豆1:麹(米・麦)1
20割麹の場合…大豆1:麹(米・麦)2
塩分が一定なら、麹歩合が高いほうが甘くなります。お米のデンプンが分解されて、ブドウ糖ができるためです。一般的には7~10割が多いですが、近年は甘口人気が高まっているため、10割以上も多く販売されています。
なお、豆味噌は100%大豆が麹のため、麹歩合の考え方はありません。
味噌の塩分は大丈夫?
結論から言うと、塩分制限の必要のない方、健康な方に関しては、普通に味噌汁を一日1~2回食べる分には、まったく気にするほどではないと思います。最近では、さまざまな研究や調査が進み、多くの専門家が味噌汁を推奨しています。
また、一般的な辛口味噌でも、味噌汁の場合は10倍程度に薄まりますし、そもそも味噌汁の塩分量はそんなに多くありません。味噌そのものの栄養価の高さに加え、具材の栄養素もまるごと摂れる味噌汁は、ヘルシーでいて万能な一品です!
なお、野菜や海藻と一緒に摂れば、塩分を体外に排出しやすくするだけでなく、栄養価もさらに高まるのでおすすめです。
大事なのは、ご自身の体質や生活スタイルに合った“適度な塩分量”で、おいしく召し上がっていただくこと。味噌を上手に取り入れて、健康管理に役立ててくださいね。
『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会)
『みそ知り博士のQ&A50』(発行/みそ健康づくり委員会、監修/中央味噌研究所)
『みそを知る』(発行/みそ健康づくり委員会、監修/中央味噌研究所)
『みそサイエンス最前線』(発行/みそ健康づくり委員会、監修/中央味噌研究所)
『新・みそ技術ハンドブック 付 基準みそ分析法』(発行/全国味噌技術会)
『発酵食品学』(発行/講談社サイエンティフィク、編著/小泉武夫)
『発酵と醸造 味噌と醤油 ─製造管理と分析─』(発行/朝倉書店、編著/東和男)
『味噌力』(発行/かんき出版、著者/渡邊敦光)
『味噌をまいにち使って健康になる』(発行/キクロス出版、著者/渡邊敦光)
『味噌大全』(発行/東京堂出版、著者/渡邊敦光)
『みそを学ぶ』(発行/東京味噌会館)