ソテツは、奄美諸島や沖縄地方に自生する植物で、古くから味噌や醤油、焼酎、もち、粥、団子、菓子など、さまざまな食品に加工され「救荒食物」としても、人々の生活を支えてきた。
「ソテツ味噌」は、ソテツの実を、米や麦の代わりに仕込んだもので、ソテツの実は「ナリ」と呼ばれているため「ナリ味噌」とも称される。
ソテツの実には、「サイカシン」という毒が含まれているが、「水さらし」と「発酵の力」で毒を分解し、おいしい味噌に仕上げるというから驚きだ。
ソテツ味噌の原料配合や製法は地域により若干異なるが、主な原料は、ソテツの実、玄米、大豆、食塩だ。製法は、徐毒の作業があるだけで、あとは、米味噌や麦味噌とほぼ同じである。
収穫後、十分に乾燥させたソテツの実を二つに割り外皮を取り除いたら、毒を抜くために数日間水にさらし乾燥させ粉末にする。その後も、水洗い、水さらし、乾燥を繰り返す。ソテツ粉末に玄米を混ぜて蒸し、麹をつくる。蒸大豆と食塩を混ぜて仕込み、数か月ほど発酵・熟成させることで毒が分解され、ソテツ味噌が完成するそうだ。
ソテツ味噌は、食べ応えのあるツブツブ感と独特の風味と甘味が特徴で、主に茶請けやつまみとして食べられているほか、和え物や炒めものにも使われる。
ソテツは、食用だけでなく、民間薬、防風、燃料、子どもの遊具など、さまざまな用途に活用され、島の人々の生活を支えてきた。近年は食も豊かになり、ソテツは毒を抜く手間がかかることから、食べる機会は減っているが、島の人々にとって、ソテツは恩人であることには変わりない。
「ソテツ味噌」は、現在では、購入して用いるのが一般的であり、島の名物として物産展や通販などでも販売されている。