マルカワみそ・河崎宏さん「経済価値より生命価値を大切に」

福井県越前市。のどかで自然あふれる田園地帯に、1914 年創業の醸造元「マルカワみそ」がある。河崎宏さんは、東京農業大学在学中に、化学物質による環境汚染問題をテーマにした「複合汚染」(有吉佐和子)と「沈黙の春」(レイチェルカーソン)に出会い、衝撃を受ける。母乳から農薬が出たという報道にもショックを受け、「人間とは? 食べ物とは?」を模索し、その結果、「無農薬や有機栽培された原料で味噌をつくりたい!」と思うようになった。

入社以来、その思いは募り、1995 年、念願叶って有機味噌の生産を開始。だが当時は思うように売れず、大赤字を招くことに。苦しい経営が何年も続く中で、自家採取の麹菌に注目。一昔前は当たり前だったが、今ではほとんど行われていない技術である。自家採取に成功し、商品化したところ、有機味噌の注文はどんどん増えていった。

その後もさまざまな研究を重ね、種まきから製品(味噌)になるまでの、完全な味噌づくりを追及。2009 年からは、自社農場で大豆を育てている。「味噌屋と農業が融合したものづくりを実践していきたい。さらに、味噌にとことんこだわった、来て、見て、触って、食べて、つくれるテーマパークをつくりたい」と夢を語る河崎さん。「経済活動を続けることは大事。だが、命の源となる食べ物を提供するためには妥協できない」。マルカワみその選択は、「経済価値」ではなく「生命価値」。「一杯の味噌汁が、日本の未来を変えていく」。河崎さんの言葉に込められている深い意味を知ることができた。


自然栽培の味噌「有機みそ未来」

Marukawa Miso, a miso manufacturer established in 1914, is located in Echizen City. Hiroshi Kawasaki, the company president, grows koji mold and uses it to make his products whose ingredients are organic. “Maintaining economic activities is important. However, I can’t compromise when it comes to providing food which is the source of our lives. Miso soup is going to change Japan’s future,” he says wholeheartedly.

関連記事

  1. ミヤワキ収穫感謝祭

  2. ヤマキ・木谷富雄さん「わが家の味こそ、日本の食文化」

  3. ホシサン・熊本の自然を生かした味噌づくり

  4. ヤマト醤油味噌、生味噌の賞味期限を6か月延長“味噌ロス”削減へ!

  5. 【ご当地味噌グルメ】常備菜に便利!富山「よごし」

  6. 小玉醸造・歴史あるレンガ造りが蔵人たちの思いを伝える