味噌おでんの世界へようこそ

たまごや練り物、牛スジ、大根、こんにゃく、はんぺんなど、たっぷりの具材を煮込む鍋料理のおでん。ベースのスープや具材、つけだれの種類は地域や家庭によって異なるものの、老若男女に不動の人気メニューとして愛されている。さまざまな食材の旨味が凝縮したアツアツのおでんは、この時期の醍醐味だ。

全国的にみれば「味噌おでん」は、主流ではないものの、各地に味噌にまつわるおでんは存在する。しかも、おでんのルーツは味噌に関係あり! 味噌おでんの世界をご案内します。

おでんのルーツは味噌田楽⁉

豆腐やこんにゃく、なす、里芋、アユなどに、甘く仕立てた味噌をつけていただく「田楽」は、見た目もかわいく、パクッと食べられる手軽さから、普段のおかずはもちろん、おもてなしメニューにも対応できる万能おかずだ。

「田楽はむかしは目で見今は食い」という句があり、この意味は、平安時代以来、田植えの際に田の神を祀るために田の畔で笛や太鼓の伴奏で歌い舞った「田楽舞い(田楽踊り)」にある。やがて、それを専門職とする「田楽法師」が現われ、下に白袴、上に色のついたものを着て、「高足」という一本足の竹馬のようなものに乗り踊る姿が豆腐の串焼きにそっくりだったことから、「田楽」という名がついた。

実は、おでんの「でん」は、田楽の「田」。「お」は丁寧にする「御」をつけたもの。もともとは、室町時代の宮中や幕府に仕えた女性たちの隠語で、それが江戸時代になり一般に広がった。

現在のように、大根やちくわ、こんにゃく、昆布などを煮込んだ料理を「おでん」と呼ぶようになったのは、江戸時代の終わり頃といわれている。

江戸っ子は気が短く、注文してから焼くことはもちろん、味噌をつけることさえも待っていられなかったことから、煮込みタイプの「おでん」として屋台で売られるスタイルが流行し、各地へ広がったとされている。

かつて屋台で売られていたおでんは、いつしかコンビニエンスストアのVIP席「レジ横」を陣取るほどの国民食へと昇格。「ベージュ系」食材が多く、彩りが少ないにもかかわらず、あの見た目と香りにそそられるのは、日本人なら誰しも同じだろう。

おでんは、肉や魚、野菜、たまご、こんにゃくなど、一品でさまざまな栄養がとれる万能食。主菜にも副菜にもなり、味が染み込むほどにおいしさが増す、最強のつくりおきメニューともいえる。

しかし、さすがに何日も同じ味わいだと飽きてしまう…。そんな人におすすめしたいのが、「味噌だれ」だ。1日目は普通のからしで食べて、2日目は、味噌だれでアレンジすれば、おでんの楽しさが2倍に! 時には、愛知流の煮込みおでんを。


青森生姜味噌おでん

「青森生姜味噌おでん」とは、通常のだしベースのおでんに、生姜がきいた味噌だれをつけて食べる、青森のソウルフード。戦後、冬の厳しい寒さの中、青函連絡船に乗り込もうとする船客の体を少しでも温めようと、ある屋台の女将さんが味噌に生姜をすりおろして入れたのが始まりとされる。具材には、陸奥湾でとれるツブ貝や、薄いさつま揚げのような大角天、初夏には根曲がり竹が使われるのも青森ならではだ。

「青森おでんの会」では、「青森生姜味噌おでん」をご当地の食文化として広めようと、全国に向けて発信中。青森市内の「生姜味噌おでん」取扱店をピックアップした「おでんMAP」は、公式サイトで掲載されている。現地を訪れる際は、参考にするとよい。

レシピ

【材料(つくりやすい分量)】
津軽味噌(赤味噌、こしタイプ)…125g
生姜…50g
酒…1/2カップ
だし汁…1/2カップ
みりん…1/2カップ
砂糖…大さじ2
※生姜や砂糖など、お好みで調整してください。

【つくり方】
①鍋に酒を入れ、火にかけて煮切りアルコールをとばす。鍋に味噌、だし汁、みりん、砂糖を加え、かき混ぜながら沸騰するまで火にかける。沸騰したら火を止め、10分ほど冷まし粗熱をとる。
②よく洗った生姜を皮付きのまますりおろし、鍋に加えて完成。

取材協力/青森おでんの会

愛知の味噌おでん

愛知県では、味噌だれを常備している家庭も多く、おでんに限らずさまざまな料理に味噌だれをかける文化がある。コンビニエンスストアのおでんにも味噌だれがついてくる。しかし、なんといっても絶大なインパクトを誇るのが、豆味噌をベースとした甘めのスープでじっくり煮込む「味噌おでん」だ。

見ためは濃い茶色で味わいも濃厚だが、決してしつこくなく、具材に甘めの味噌味がたっぷり染み込んでいる。ごはんのお供に、お酒のつまみに最適な一品。一般的な味噌は「煮えばな」で楽しむのに対し、豆味噌は、煮込めば煮込むほどおいしくなるのが特徴である。普通のだしベースのおでんとはひと味違った味わいを楽しむことができる。

レシピ

【材料(つくりやすい分量)】
だし汁…1000ml
豆味噌…100g
砂糖…50g
酒…50ml
みりん…50ml
具材…お好みで
※調味料はお好みで適宜調整

【つくり方】
①大根や牛スジ、たまごなどは、下ゆでする。
②だし汁を沸かし調味料を入れて混ぜ(豆味噌はかたいのでよく混ぜる)、具材を入れる。数時間煮込んだら完成。


『江戸川柳飲食事典』(発行/東京堂出版、著者/渡辺信一郎)、『くいもの 食の語源と博物誌』(発行/勉誠出版、著者/小林祥次郎)、『江戸味覚歳時記』(発行/時事通信社、著者/興津要)、『たべもの語源辞典』(発行/東京堂出版、著者/清水桂一)、『田楽考―田楽舞の源流』(発行/飯田道夫、著者/臨川選書)

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。