山形県天童市にある株式会社いにしえは、自然栽培の原料を使用し、無添加の食品を製造・販売しています。ECサイトではパンやピザ、自然栽培の米や野菜などを販売。こだわりの食材を提供し続けることで、生産者を継続的に支援していけるような仕組みを構築するのと同時に、あらゆる生き物との共生を目指しています。取締役社長の井形誠さんにお話を伺いました。
聞き手/秋山昭代
【井形誠さんプロフィール】
1978年生まれ、東京都出身。大学卒業後は広告代理店に就職し、会社員として働きながら野生動物のボランティア活動に参加。30歳を機に転職し、大規模農業の研修や自然食品の販売に携わり、2021年に株式会社ネークルを仲間と起業。2023年に株式会社いにしえに社名変更し、2024年代表取締役就任。
株式会社いにしえについて教えてください。
2021年に仲間3人で株式会社ネークルを立ち上げ、自然栽培の果樹園でぶどうとワインづくりを始めました。2023年に株式会社いにしえに社名変更し、農業の変革や味噌蔵を支える仕組みづくり、農作物がより売れるような商品開発のプロデュースも行っています。
2024年には県内外の自然栽培農家と食品加工企業と連携し、大豆100%の麺を開発し販売開始しました。両者を繋ぐことで自然栽培の拡大を目指しています。ECサイトではパンやピザ、自然派ワイン、味噌、自然栽培の米や野菜などを購入することができます。
いにしえ味噌について教えてください。
当社では、委託生産した自然栽培大豆・米を使用し、味噌を販売しています。また「47都道府県味噌プロジェクト」と称し、各地域で代々栽培されてきた「在来大豆」と極力その地域の米や塩を使って味噌にすることで、在来品種や発酵文化を未来へ繋ぐプロジェクトを進めています。
いろは(やまがた味噌)
山形県で栽培された3種類の大豆(秘伝豆、里のほほえみ、エンレイ)、3種類の米(ひとめぼれ、つや姫、ゆうだい21)、宮城県産の平釜製法でつくられた海塩を贅沢に使った味噌。多様な豆と米が織りなすバランスの良い香りや旨味が特徴です。
醸造委託先:今野味噌醤油醸造所(山形県米沢市)
いのいちばん(山形味噌)
山形県庄内産の青大豆・秘伝豆とササニシキ、平釜製法でつくられた宮城県産の海塩を使った味噌。枝豆のような甘さが口に広がり、青大豆ならではの香ばしさも感じられる味噌です。
醸造委託先:今野味噌醤油醸造所(山形県米沢市)
にいがた味噌
47都道府県プロジェクトの第一弾。新潟県産の大豆・さといらず、新潟県産の米・五百万石、日本海の海水を全て手づくりで釜焚きして製造している「ミネラル工房」の塩を使用。田楽やもろきゅうなど甘味を楽しむ料理におすすめです。
醸造委託先:たなか農園(新潟県新潟市)
全国の農家と味噌蔵を継続的に支えていきたい
当社では、国産大豆の供給量の少なさに着目し、大豆の生産量増加・生産効率向上に向け、山形県庄内地域の契約農家へ播種機・コンバインなどの農機貸し出しを行なっています。また味噌の伝統製法や食文化を後世へ繋げたいと考え、山形県米沢市で130年続く無添加・自然発酵の伝統製法で味噌づくりを行っている今野味噌醤油醸造店にて味噌の委託・製造をしています。
さらに、味噌や日本酒などを保管・熟成するためだけでなく、文化財保護の観点から、使用していない蔵や蔵の使い道に困っている方の情報を募り、蔵の新たな活用法を築いていきたいと考えています。自然と調和した農業のあり方を模索し、いにしえからの知恵をアップデートしながら日本の食文化を守っていきたいと思っています。
【株式会社いにしえ】
山形県天童市糠塚2丁目3−11