【味噌の効用】最新研究から読み解く。味噌の塩分は、高血圧になりにくい?

味噌

「味噌汁を食べると高血圧になる」という都市伝説は、未だに広く残っています。では、実際のところはどうなのでしょうか。実は、「味噌で塩分を摂ると高血圧になりにくい」ということが、いくつかの調査や研究で実証されています。

高血圧は、サイレントキラー

バランスの悪い食生活や運動不足など、不規則な生活習慣によって引き起こされる生活習慣病。なかでも「高血圧」は、“サイレントキラー”とも呼ばれ、高血圧そのものには自覚症状がほとんどないものの、そのままにしておくと動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞といった深刻な病気につながる可能性があります。

確かに、高血圧の大きな要因は、塩分の多い食事です。しかし、塩分は少なすぎても病気になりやすく、心血管疾患のリスクが高まることが報告されています。つまり、少なすぎず多すぎず“適塩”が正解なのです。

日本人の約半分は、食塩非感受性

【参考】東京大学医学部 藤田敏郎名誉教授の研究より(1995年)

ここで注目したいのが、日本人は、塩分を多く摂っているわりには血圧が低く、世界トップクラスの長寿国という事実です。その理由の一つが、「食塩感受性」によるものだと考えられています。これは、食塩を摂って血圧が上がるか上がらないかは個人差がある、ということ。実は、日本人の約50%が、食塩を制限しても血圧に影響しない「非食塩感受性」だと言われています。

そもそも味噌汁の塩分は、そんなに多くない!

一食あたりの塩分量の比較   【参考】 日本食品標準成分表2015年版(七訂)

味噌自体の塩分は12%前後ありますが、味噌汁にした場合は約10倍に薄まります。味噌汁1杯分の塩分量は、1.5~2g程度とそんなに気にするほどではありません。

また、野菜や海藻などと一緒に摂ることで、より塩分を体外に排出しやすくなります。塩分が気になる人は、具だくさんの味噌汁がおすすめです。

さまざまな調査や研究で解明された、味噌汁の塩分の誤解

神田晃さんたちは、1999年に血圧の正常な男女の食生活を調査し、どのような食生活が高血圧のリスクを上げるのかを、4年間にわたり調査しました。結果、味噌汁を1日2杯以上飲む人は、高血圧のリスクを下げることがわかりました。

また、『正しい塩分の摂り方』(幻冬舎ルネッサンス新書)の著書である五明紀春さんは、多くの文献を集め、「味噌から摂取される食塩量は、血圧の変化には関係しない」と発表しています。その後、「味噌汁を摂っても血圧は上がらない」という多くの研究結果が出ています。

動物実験でも実証、熟成期間がミソ?

私たちの実験では、食塩感受性(2.3%の食塩濃度で血圧が上昇)のラットに、「普通エサ(塩分0.3%)」「高食塩エサ (塩分2.6%) 」「味噌エサ(塩分2.6%)」を与えて経過を観察しました。結果、「味噌エサ」は、「高食塩エサ 」ほど血圧を上げませんでした。これは、味噌に含まれる塩分は、食塩そのものとは異なった働きをすることを意味しています。

なお、「味噌エサ」に使用しているのは、6か月熟成させた味噌です。これまでの研究から、熟成期間が長い味噌(6か月~2年)に健康効果が高い傾向があることから、熟成中に有効成分が生成されると推測しています。

味噌は、日本古来の最強サプリ

味噌は、塩を運ぶ車として長い間悪者になってしまった時期があります。しかし、味噌は1300年も歴史があり、日本人に対していいものであったから続いてきたのです。まさに、「日本古来の最強サプリ」だと考えています。

まだ全てが解明されているわけではありませんが、持病などで特に塩分制限のない人は、一日1~2杯のお味噌汁を飲むことをおすすめします。

文/渡邊敦光

1940年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒。九州大学大学院博士課程理学研究科修了。理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、1996年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、2004年に退官後も名誉教授として研究を続行。

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