一馬本店・下川啓文さん&倫子さん「味噌をつくり続けて120年」

一馬本店は、山口県防府市にある味噌と醤油の醸造場。もともと倫子さんの実家の家業であり、1988年の結婚を機に、啓文さんが四代目として後を継ぎました。「100人のお客様に1回だけ食べてもらうより、1人のお客様に100回食べてほしい」…味噌へのこだわりと、その思いを聞きました。
(聞き手/藤本智子)

下川啓文●プロフィール
1958年山口県出身。大学卒業後、フリーズドライ関連の仕事に従事。現在は一馬本店四代目として切り盛りするほか、食育活動も積極的に行う。

下川倫子●プロフィール
1957年山口県出身。大学卒業後、洋裁関係の仕事に従事しながら家業を手伝い後継ぎに。現在はネットショップ店長、会社全体のサポート役を担う。

「一馬本店」の由来を教えてください。

もともとつくり酒屋からスタートしましたが、1899年に毛利藩の貯蓄米倉庫を購入し、そこに設備を整え、味噌・醤油の製造元として新たな道を歩み始めました。以来120年以上、味噌と醤油をつくり続けています。地元の人々には「お宅の味噌が一番おいしい!」と評判で、「一番うまい、一番うま、いちうま…」から、「一馬」という社名になったそうです。

後を継がれたときのエピソードは?

私は3人姉妹の末っ子ですが、姉たちが先に嫁いでしまったため、「明治から続く伝統を、私たちの代で終わらしてはいけない」と、結婚を機に後を継ぐことを決意しました。父は寡黙な人でしたがとにかく研究熱心で、味噌づくりや加工品の開発に力を入れていました。非売品ですが、父がつくった味噌味のしゃぶしゃぶだれは、ピーナッツバターやごま、しょうがなどが入っていて、わが家の定番の味です。

味噌づくりのこだわりは?

山口県では、昔から「麦味噌」が食べられてきました。原料は国産、特に山口県産を中心に「目が届くもの」を使用しています(一部カナダ産大豆もあり)。もちろん県産が理想ですが、値段が高いと毎日食べることができないと思いますので、できる限りよい原料を吟味し使用しています。また通常麦味噌の多くが、裸麦と大麦いずれか1種を使うのですが、うちでは2種類の麦を使用しています。特徴の違う麦を合わせることで、味に奥深さを出しています。

おすすめの食べ方はありますか?

麦味噌は、主張が強すぎず自然な甘みがあるので、野菜の味とよくなじみます。具だくさんの豚汁は、最高ですよ。山口県産の大豆と麦を使用した「無添加麦味噌やまさん」はうちの看板商品です。漉してあるので、さっと溶けて使いやすく、マイルドな口当たり。そのまま野菜スティックなどにつけてもおいしいと思います。

「味噌もろみ」とは?

「味噌もろみ」は、味噌をつくる過程で、一部を「おかず味噌」に加工したものです。地元ではメジャーで、もろきゅうなど生野菜につけて食べるのが一般的です。甘口に仕上げてあり、素朴ながらも味わい深い風味です。おにぎりや冷奴にもぴったりで、常備しておくと便利な一品です。オーソドックスな味から、しょうが味、しいたけ味など、バリエーションも多くつくっています。

伝えたい思いを聞かせてください。

味噌や醤油をはじめとした発酵食品は、私たちの生活になくてはならないものであり、食の基本となるものです。忙しいご時世で、毎日の食事を完璧につくることは難しいと思いますが、だからこそ「ごはんと味噌汁」が基本にあれば、上手に加工品や総菜なども使っていいと思うのです。さまざまな食品が溢れるこの時代、派手さはなくても、毎日、そして長く使っていただけるように、味・安全性・価格など一つひとつに気を配り、これからも丁寧に味噌や醤油をつくっていきたいと思います。

無添加麦味噌やまさん
味噌もろみ


株式会社一馬本店
山口県防府市三田尻2-1-14
TEL/0835-22-0018

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。