天野屋・天野博光さん「地下の土室で産声を上げる 天野屋の麹」

プロフィール●1956年東京都出身。大学卒業後、天野屋へ入社。現在は六代目として切り盛りするほか、味噌づくり教室などの食育活動も積極的に行う。趣味は鉄道。

神田明神(東京都千代田区)のすぐ隣にある「天野屋」は、江戸時代から伝わる製法で味噌や甘酒、納豆をつくり続け、人々の生活を支えてきました。100年以上、麹製造に使用されている地下6m掘りつくられた土室は、貴重な文化財として、千代田区指定有形文化財に指定されています。
六代目天野博光さんに話を聞きました。(聞き手/藤本智子)

天野屋について教えてください。

天野屋の創業は1846年、酒の製造を始めた初代がのちに、麹、甘酒、納豆、味噌の製造も兼ねるようになりました。 江戸時代、この辺りには麹屋や味噌屋がたくさんあり、人々の食を支えていました。残念ながら安政の大地震でほとんどが潰れてしまいましたが、幸いにも当店は無事でした。その後も関東大震災、戦災で改修を余儀なくされながらも、伝統製法を受け継ぎ、続けてくることができました。現在も神田明神のすぐ隣に販売店と、甘酒などを提供している喫茶店、工場を併設しています。

味噌づくりのこだわりは?

おいしい味噌の決め手は麹の質にかかっています。当店では一切機械を使わず、4日間かけて丹精込めて麹をつくっています。年間を通して麹づくりに最適な温度と湿度を保てる「土室」でつくることが、最大の特徴です。土室は、関東ローム層を地下6mまで掘り、天井をアーチ型に形成、壁と天井はレンガ造りで、100年以上大事に使用しています。

江戸味噌

看板商品「江戸味噌」の特徴は?

「江戸味噌」という名称ですが、「江戸甘味噌」のような麹歩合が高く低塩の「甘味噌」ではなく、一般的な味噌と同じくらいの塩分です。天然醸造で一年以上寝かせているため、まろやかで香り高い風味です。江戸時代につくっていた配合をほぼそのまま受け継いでいますが、正確なレシピがあるわけではありません。数十年と製造をしていく中で、自然と職人の感覚が磨かれていくのだと思います。「いい味噌は、味噌汁にしてはじめてその良さがわかる」といわれますが、江戸味噌は、味噌自体の風味がしっかりしているので、大根、豆腐、ねぎ、わかめなど、シンプルな材料で召し上がっていただくのが、おすすめです。

芝崎納豆

納豆もつくって大丈夫?

神田明神名物「芝崎納豆」は、ふっくらとした大粒の大豆を使用しているのが特徴です。江戸時代から、修行僧の貴重なたんぱく源として愛好されていました。納豆菌は繁殖力が強いため、味噌屋でつくることは珍しいのですが、工場を分けていることと、同じ日に製造する場合は麹を先につくることで、これまで問題が起きたことは一度もありません。

ストレート甘酒4袋入り

読者へ一言お願いします。

近年は、生活習慣病をはじめ花粉症やアレルギーなど、昔は少なかった病気が急増しています。ごはんに味噌汁、納豆、甘酒など昔ながらの発酵食品を日常的にとることで免疫力を高め、病気やアレルギーを予防できると考えています。歴史のロマンを感じつつ、当店の味噌や甘酒、納豆を味わい、「味噌が体にイイ」ことを実感していただけたらうれしく思います。

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。