糀屋三郎右衛門・辻田雅寛さん「主張しすぎず、脇役に徹すること」

糀屋三郎右衛門

東京都練馬区に蔵を構え、150年にわたる歴史を受け継ぐ糀屋三郎右衛門は、「昔みそ」の名で愛されている。七代目・辻田雅寛さんに話を聞いた。
(聞き手/藤本智子)

糀屋三郎右衛門
辻田雅寛●プロフィール
1962年東京都出身。大学卒業後、食品総合研究所での研修を経て家業を継ぐ。現在は、七代目として切り盛りするほか、食育活動も積極的に行っている。


糀屋三郎右衛門について教えてください。

明治時代に茨城県で創業、1939年から東京都練馬区中村でみそ蔵を構えています。上京した当初は上野駅近くに蔵がありましたが、現在のこの辺りには漬物屋が多く、糀の需要があったことから、移転。父の代には、戦後の原料不足などさまざまな困難があったと聞いていますが、「昔みそ」は、アメリカの書籍「BOOK OF MISO」にも掲載されるなど、多くの人に愛用され、今も伝統の味を引き継いでいます。

家業を継がれたときのエピソードは?

大学卒業後は別の会社に就職する予定でした。がその矢先、当時社長だった父が入院することになり、急遽、家業を手伝うことに。現場に入る前に研修のため、茨城県つくば市にある食品総合研究所で約1年間、みそづくりに関係の深い酵母の研究に携わりました。

学生時代は化学を専攻していたこともあり、みそづくりに抵抗はなく、子どもの頃から間近でみそづくりを見てきて、香りで出来不出来がわかる程度の感覚もありました。けれども実際のみそづくりは生易しいものではなく、その後10年ほど現場で糀やみそづくりの修行を積み、やがて七代目として後を継ぎました。

みそづくりのこだわりは?

味に直結する原料選びは何より大切で、納得いかないものは使いません。原料は国産にこだわっていますが、不作の年もあれば、品質や味が変わったりすることもあるため、その時々で吟味し、産地を変えることもあります。また、ブランド名でもある「昔ながら」の製法を大切にし、みそづくりの要となる「糀」から製造しています。約3日間をかけて丁寧に糀をつくります。できたての糀は、塩と合わせてから潰した大豆を混ぜることで、米糀が潰れにくくなり、糀のおいしさが引き立ちます。

仕込みに使用する木桶は、数十年使用しているものから、100年以上前のものまであり、独自の発酵菌がオリジナルの味わいを醸し出します。さらに、みそに余計なものを入れる必要はないという考えで、添加物は一切入れていません。そのため、袋に詰めたあとも発酵を続けガス(主にCO2)を出すため、袋の上部を開けています。

みその魅力は?

よい原料を使い、ていねいに仕込んだみそは、間違いなくおいしくできます。機械管理するわけではなく、これまでの経験と感覚だけが頼り。みそは、商品になったあとも味が変わっていくし、原料や環境によって出来上がりは一様ではありません。これは、みそが生き物であるがゆえ。その奥深さが魅力の一つであり、最近は、そんなみその特性を理解し、楽しんでくれるお客様が増えたように感じていて、とてもうれしく思います。

そして、私の持論ですが、みそは毎日のように食べるもの。個性はあっていいけれど、決して主張しすぎないこと。存在感のある脇役でいたいと思います。

夢を聞かせてください。

地域での食育活動や工場見学にもできる限り対応していますが、みそ汁嫌いの子どもが、ダシなしのみそ汁を「おいしい!」とごくごく飲んでくれて驚きました。同時に、地元ならではの味として、特に若い世代や子どもたちへ、伝えていくことの重要性を感じています。

求められる味は、時代とともに少しずつ変わっていますので、調整は必要ですが、基本のつくり方や理念を変えることはありません。これからも、自分たちが納得するみそ、安心して食べられるみそをつくっていきたいと思います。

糀屋三郎右衛門
「おふくろ自慢・甘口」(粒タイプ)
塩分控えめ、淡色系の甘口タイプ。野菜のみそ汁等に最適。
糀屋三郎右衛門
「おふくろ自慢・中辛」(粒タイプ)
塩分が普通の中辛タイプ。なめこ、しじみ等に最適。

糀屋三郎右衛門
東京都練馬区中村2-29-8
TEL/03-3999-2276 

株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、月刊「ジャパン味噌プレス」編集長、みそソムリエ。アパレル販売員、読者モデルを経て、2011年「ミソガール」として味噌の普及活動を開始。みそまる考案。ミラノ万博や伊勢志摩サミット等イベントやメディア出演を通し、味噌の魅力を伝えている(2019年MISODOに改名)。『みそまる』(宝島社)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等著書多数。※サイトに掲載している記事は取材当時の情報のため、現在と内容が変わっている可能性がございます。