山梨の郷土料理「ほうとう」は、小麦粉を練ってつくる太い平打ち麺とたくさんの野菜を、みそ仕立ての汁で煮込んだもの。かぼちゃ、じゃがいも、里芋、白菜、ねぎ、ごぼう、にんじん、しいたけなど具材に決まりはないが、中でもかぼちゃは欠かせない。みそ仕立ての汁にほろっとくずれるかぼちゃの甘味、具材の旨みをたっぷり吸い込んだもっちり麺が絶妙の一体感を醸し出す。ほうとうは、平安時代に禅僧により中国から日本にもたらされた「饂飩(はくたく)」(こねた小麦粉を麺棒で細長く延ばしたもの)が語源といわれている。
山々に囲まれ、水田が少ない山梨県は、昔からお米を主食にすることが困難で、小麦を主食としてきた。ほうとうはこれ一杯でしっかり栄養をカバーできるとあって、この土地ならではの生活の知恵として古くから根付いてきた。漢字で「宝刀」と書き、武田信玄が刀で具材を刻み、野戦食として用いていたという伝説も残っている。最近では、チゲやバター風味など、アレンジメニューも多く誕生。生麺をそのまま具材と一緒に煮込むので、汁にとろみがついて冷めにくく、食べたら体がぽかぽかになる。これからの季節にぴったりだ。
Hoto, a hearty and warming local dish of Yamagata, is flat udon noodles cooked with various vegetables in a misobased soup.