疫学調査と動物実験から見えてきた。みそで乳がん予防!?

「乳がん」はもともと欧米で多いがんですが、近年日本でも急増しています。女性の発症率は、おそよ14人に1人。初潮が早く、閉経が遅いほどリスクは高まり、また、出産回数が多いほど乳がんのリスクが抑えられるとされていますが、「食生活の欧米化」が急増した要因の一つといわれています。今回は、みそと乳がんの関係についてお話します。

国立がん研究センターによる多目的コホート研究では、40~59歳の女性2万1852人を対象に、みそ汁や豆腐、納豆など大豆製品の摂取量から計算されるイソフラボンの摂取量と、乳がん罹(り)患(かん)率の関係を、10年間にわたり追跡し調査を行いました。

その結果、「みそ汁1日1杯未満」の人の乳がん罹患率を1とすると、「1日2杯」の人の罹患率は0.74、「1日3杯以上」の人の罹患率は0.6という数値でした。つまり「みそ汁1日1杯未満」の人に比べ、2杯の人は26%、3杯以上の人は40%も乳がんの罹患が減少していることがわかったのです(図1)。

特に幼少期の食生活は、がんの発生に関与しているので、成長期にみそをはじめとした大豆食品を多く食べると、乳がんのリスクを減らすことができるでしょう。また、閉経後の女性においても、イソフラボンを多く摂取すると、乳がんになりにくいことが発表されています。

さらに、動物実験※では、乳がんの発生を抑えるだけでなく、「がんの成長を抑える働き」が実証されています。

予めラットに発がん物質を与え、乳がん(乳腺腫瘍)ができたラットに4種類のエサを与えて観察しました(図2)。すると、抗がん剤(タモキシフェン)単体を混ぜたときよりも、みそを加えたときのほうが、大幅に乳がんの腫瘍が小さく抑えられました。エサに混ぜたみその量が多いほど、その効果は大きかったのです。

乳がんは万が一かかってしまっても、治療の選択肢が豊富なため、5年生存率は約90%、10年生存率は約80%と、がんの中でもトップクラスです。定期的な検診とみそで、乳がんを予防しましょう。

※Gotoh T., et al., Jpn J Cancer Res 89:487-495,1988.

1940年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒、九州大学大学院博士課程理学研究科修了。理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、1996年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、2004年に退官後も客員教授として研究を続行。『味噌力』(かんき出版)、『味噌大全』(東京堂出版) 等、著書多数。全国各地で講演会を行うほか、テレビや雑誌等のメディア出演など、多方面で活躍中。