みそが胃がんを予防!?

1900年代の米国では、胃がんの発生率が一番高かったが、冷蔵庫の普及で塩の使用量が減ったことや、新鮮な野菜を多くとることで、胃がんは減少。だがその一方で、大腸がんや前立腺がん、乳がんが増加した。食生活でがんが変化するという一つの証明だが、日本でも同様の傾向をたどり、西欧的ながんが増加している。減少したとはいえ、まだまだ一定数発生している、胃がんとみその関係について紹介する。

興味深い疫学データがある。1981年に国立がんセンター研究所の平山雄博士は、13年間にわたり40歳以上の男女(延べ300万人以上)に対し調査を行った。結果、男女ともにみそ汁の摂取頻度が高くなるほど、胃がんの死亡率が低くなることがわかった。特に男性では、全く飲まない人は、毎日飲む人に比べて、死亡率が1.5倍も高かった。

私どもの動物実験でも、みそが胃がんを抑制するという結果を見出している。胃がんを誘発するため、飲料水に発がん物質を混ぜマウスに16週間与えると、当然胃がんが生じるが、さらに、「①みそ入り餌」と「②食塩入り餌(みそと同じ塩分濃度)」を与えて胃がんの発生率を調べた(グラフ)。結果は、「①みそ入り餌」のほうが胃がんの発生率が低く、また、できたがんの大きさも小さかった。

つまり、みそには同じ食塩が含まれているにもかかわらず、胃がんを抑制することを示している。確かに高濃度の塩分は、胃の粘膜を破壊し胃がんを促進するが、「みそ=高塩分=胃がんの原因」といったこれまでの常識を覆すような結果となった(下記グラフ)。

緑黄色野菜や大豆、豆腐にも、同じく胃がんの抑制効果があるという研究データも。そこで、みその熟成度合いでも同様に調べたところ、仕込み直後、120日熟成、180日熟成を比べると、熟成が長いほうがより効果が高かった。

たばこはがんのリスクを間違いなく高めるので控え、その上で「ごはんとみそ汁」を摂取することが、胃がん予防への近道といえるだろう。

1940年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒、九州大学大学院博士課程理学研究科修了。理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、1996年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、2004年に退官後も客員教授として研究を続行。『味噌力』(かんき出版)、『味噌大全』(東京堂出版) 等、著書多数。全国各地で講演会を行うほか、テレビや雑誌等のメディア出演など、多方面で活躍中。