暑い盛り。辛いものを食べて暑さを吹き飛ばしたいと願う人も多いだろう。「辛い」には、不思議な魅力があり、“もう辛いのはいらない”と思っても、しばらく経つと不思議と恋しくなるもの。辛いを象徴する「赤」は、熱く活発なイメージが強く、エネルギーを表現する色。国や地域、性別にかかわらず人気で、気分を高揚させ、元気を与えてくれる。みそに「ピリッ」という辛味がプラスされることにより、私たちを虜にする魅惑の風味へと早変わりするのだ。
トウガラシの歴史
なんといっても 「辛さ」の代表格はトウガラシで、今や世界中で愛されている。原産地は中南米で、メキシコでは数千年前から食用として利用・栽培されており、この地域がトウガラシの発祥といわれている。しかし、世界に広く知られるようになったのは15世紀頃。このときコロンブスは現地で見つけたトウガラシをコショウと勘違いして伝えてしまった。今でも英語のトウガラシ名”red pepper”のように、世界各地でコショウと混同した名前がついているのはそのためだ。
ヨーロッパに伝わった当初は「食べると死ぬ」とまでいわれたが、わずか500年のうちに急速に世界中に広がり、全世界の人々を魅了するに至った。日本に入ってきた時期は諸説ある。16世紀半ばに鉄砲とともにポルトガル人が伝えたという説と、17世紀はじめに豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、日本に持ち帰ったとする説が有力だ。また逆に、朝鮮半島へは豊臣秀吉が伝えたという説もある。「トウガラシ(唐辛子)」という名前から、中国から伝わったと誤解されがちだが、実際、中国にトウガラシが伝わったのは、日本よりあとで、17世紀半ば頃とされる。
トウガラシが体にイイわけ
トウガラシの辛み成分カプサイシンは、基礎代謝を上げて体内の脂肪の燃焼を助け、肥満を予防する効果があるとされる。さらに、食欲を増進させ疲労回復の効果も期待できるので、夏バテ対策には最適というわけだ。また“辛み”の刺激により、塩分が少なくても薄味と感じないので、減塩対策にも。カプサイシン類は熱に強いので、調理で加熱しても、その成分に変化は少ないとされる。トウガラシは、辛味成分だけでなく、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンE、鉄、カリウムも豊富だ。
韓国のオモニの味×日本のお母さん
日本でみそ汁が“おふくろの味”といわれるように、韓国のおふくろ(オモニ)の味といえば、やはりキムチ。日本に「手前みそ」があるように、それぞれの家庭に「手前キムチ」がある。愛する家族の健康を思いやる母の思いは、世界共通。豚キムチにみそを隠し味で入れたり、キムチのみそスープは、日韓の母の思いが一つになった愛情レシピ! 今や日本の漬物生産量第1位を占めるキムチは、日本人にもなじみ深いもの。キムチといえば誰もが、赤く染まった白菜や大根を思い浮かべるだろう。 だが実は、キムチにトウガラシが使われるようになったのは、今からおよそ250年前と意外に歴史は浅い。それ以前は、「トウガラシは毒がある」と噂されていたというから驚きだ。古くは、香辛料としてニンニクやしょうがなどが中心で、色づけには果物などが使われていたという。
宇宙一辛い!?味噌ラーメン「支那そば やぐら亭」
お店の人も「やめておいたほうがいい」と断言する、宇宙一辛い激辛味噌ラーメン「ほたる」に、ミソガールがチャレンジ! 炭入りの真っ黒なスープ、炎に包まれて登場した、激辛味噌ラーメンのお味は…。一口食べて、「ん? いけるかも?」と思った次の瞬間、のどを突き刺すようなヒリヒリ感。次第に唇もビリビリしびれ、冷や汗だくだくで、手から水が離せなくなり、箸を進めることができなくなってしまった。10分経過…。辛いものには目がないミソガールだが、「これ以上食べられません、本当にごめんなさい」とギブ。レベル1でこの辛さとは、さすが宇宙一。
同メニューは、激辛好きのオーナー・清水克哲さんが、常連客の要望を受けて考案。使用しているオーストラリア産のハバネロは、国産に比べ、辛味が非常に強い。気温が50度近くなるオーストラリアでは、トウガラシに負荷がかかり、より辛味が増すため、激辛通もうなるおいしさになるのだとか。“激辛”はあくまで同店の変わり種メニューで、メインのラーメンは至って体にやさしい風味。味噌ラーメンは、数種類の味噌を秘伝の割合でブレンドし、仕上げた逸品。野菜、肉はすべて国産、化学調味料やラードは不使用、毎日でも食べたくなるラーメンだ。
ピリ辛!アジアのみその仲間
参考:『トウガラシの世界史』(発行/ 中央公論新社、著者/山本紀夫)、『新食品成分表』(発行/東京法令出版、編者/新食品成分表編集委員会)