みそと同じように、どの家庭にも必ずある身近な食材といえば「たまご」。ゆでたまご、目玉焼き、オムライス、ポーチドエッグなどのたまご料理だけでなく、パンケーキやマヨネーズ、アイスクリームなど加工品の原料としても使用され、バリエーションに富んでいます。世界中で愛されているたまごですが、古代より神聖な食べ物で、不思議な力を持っていると信じられてきました。「すべての生命はタマゴから(omne vivum ec ovo)」というラテン語ことわざが表しているように、新しい命や時のはじまりを象徴し、縁起のよい食べ物とされています。たまごの濃厚な味わいと、みそのうま味の相性は、誰もが認める名コンビ。新しいみその世界が広がります。
たまごヒストリー
古代より、たまごには不思議な力があり、生命をつくり出すだけでなく、長命、不死、繁殖力を象徴し未来を予測する力もあると考えられてきました。日本には約2500年前、中国から朝鮮半島を経由して鶏が伝えられたとされています。一般的にたまごが食べられるようになったのは、江戸時代に入ってからのことで、たまご売りも出てくるものの、まだまだ庶民には手の届かない特別な食べ物であったようです。今のように、どこの家庭の冷蔵庫にも常備されるようになったのは、昭和30年以降のことです。
たまご大好き日本人
国民一人あたりの消費量は年間330個で世界トップ3に入り、世界でも最高水準。たまご焼きや目玉焼きなどのたまご料理に加え、さまざまな加工品やスイーツに使われるたまご。アレルギーの人は例外として、もはや、食さない日はないといっても過言ではないでしょう。参考:総務省「家計調査」、農林水産省「食料需給表」、IEC資料
中国とたまご
中国では、赤ちゃんが生まれると、赤く染めたたまごにショウガを添えて祝う風習が今でも残っています。赤ちゃんの両親は、親戚や知人に、赤く染めたたまごをかごに入れて配ります。招待を受けたら必ずお祝いに出席し、赤ちゃんに幸運が訪れるようにたまごを贈るのが慣例。葬式では、たまごを来世の象徴や死出の旅路の食料として供えます。 卵黄は金貨に似ているため、「富の象徴」とされ、新年を祝う料理にたっぷり使われます。
みそとたまごは完全食
たまごは、ひなが成長するために必要な栄養素をすべて持ち合わせています。たまごの中では着々と成長が進み、やがて殻を割ってひとつのいのちが誕生するのだから、考えてみたら当然ですね! たまごの中には、みそと同様、良質なたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれています。約20種類あるアミノ酸のうち、人間の体の中では合成できないものを「必須アミノ酸」といいますが、みそにもたまごにも、必須アミノ酸9種がすべて含まれています。また、「卵黄コリン」が含まれており、認知症や老化防止に効果が期待でき、卵黄についている白いヒモのような「カラザ」には、「シアル酸」という抗がん物質が含まれているそうです。たんぱく質を漢字で書くと「蛋白質」。「蛋」という字は、中国語で「たまご」を意味するのですが、たった1種類でこれだけ栄養豊富な食品は、みそとたまご以外にはないといっても過言ではありません。ごはん、みそ汁、たまご焼きは、日本の朝食を代表するメニュー。ごはんのたんぱく質にはアミノ酸のリジン、スレオニンが不足しているので、この献立はまさに最高の組み合わせといえるのです。